霧113、電磁波190　霊障大荒れの予感

・今日からまた新たな傭兵生活が始まる
・ここの新兵に支給されるウォーハイドラはすべて二脚らしい（とりあえず二脚という感じではあるが）
　→変更には別途脚部の交換が必要　しくじった
・ラモラック社に初めてパーツを作ってもらった　良い仕上がり
・カタログからパーツを購入すること
　→大型の逆関節と大型のエンジン　あと1つ買おうとしたがクレジットが足りぬ
　　エンジンはもう1つ欲しい　ブースターも2つ欲しい
・僚機募集の呼び掛けを怠らないこと

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　私が残像領域に迷い込んでから7年が経過した。何故ここに辿り着いたのかはさっぱり分からないし、あまり覚えていない。妙に霧の多かった夜、自棄酒を決め込んだ帰り道。石畳の道を歩いていたはずが靴裏の感触が砂地に変わり、気がつけばヘリコプターの残骸が多い荒地の上に立っていたことしか記憶にないのだ。

　周囲を見渡しても、無骨な鋼の色をしたビルや工業施設のようなものしか建っていない。人目で家と、こんな旅人を迎え入れてくれそうなところは見当たらない。
　あきらめかけていたその時、鉄骨の残骸らしきものに貼り紙がしてあったのに気付いた。近付いて読む。やや古めかしくも私が理解できる言語で、はっきりとこう書いてあった。

　傭兵（ハイドラライダー）求む
　報酬は完全歩合制
　お問い合わせはネザータワー1F窓口
　あるいはxxx-yyy……

　こんな異邦人が未知の土地で生きていくには、そちらに根付いているものに従い、独自の文化に身を委ねるしかない。こうして私が選んだのは、ハイドラライダーになることだった。いや、そうせざるを得なかったのだ。

　元いた世界はテクノロジーの発達が目覚ましく、実用に至るにはまだ難しいが様々なロボットの開発が進められてきた。しかしあちら側ではこのような有人の二足歩行ロボットなんてものは見たことがない。それが出てくる漫画や、そこに登場する機体を模したリモコン操作の小型ロボットは見たが。その為初めてウォーハイドラを見た時はこんなものが動かせるようになったのか、と感動したものだ。

　そんな中私を勇気づけてくれたのが、迷い込んだのと同時期にデビューしたハイドラライダー、マーカス・グレイシーだった。

　当時のマーカスの評判は散々だった。というのも初陣を終えた直後運良くウォーハイドラ同士の戦いを見せ物として配信する放送局にスカウトされ、彼自身の実力だけでのし上がらず、メディアの多大な売り込みという名の強力な追い風に乗っかって人気になった、苦労知らずだったからだ。

　だがあるファンはバッシングをもろともせず、彼は切れ者で親しみやすい青年だと言い、またあるファン彼が敵と対峙したときに見せる凶悪な笑顔と、パーツをもぎ取らんとばかりに相手に接近し胸部装甲を引っぺがす、ダーティーなファイトスタイルに惚れていた。私は後者だった。善と悪がひっくり返ったようなギャップに心頭し、心からその人のことを応援した……
　それが今はどうだ。テレビのチャンネルを公営放送局に合わせれば、彼は動物園で新しく生まれたペンギンのリポートをしている。
　落ちぶれたな。
　もう、あのマーカス・グレイシーはいない。
　そのことは私の心の支えがなくなったことをも意味していた。こんな精神状態で傭兵を続けていいんだろうか。

　だが、こうしないと生きていく為の金は手に入らない。そう言い聞かせ、弱音を心の奥底に閉じ込め、震える手で新しく更新された身分証を掴み見る。81番、9の2乗。若めの番号になったな。今回ここに配属された傭兵は225人だと聞いた。そんなに多いと誰かが捨て駒扱いされてもおかしくない規模だが……まあいい、せいぜい足掻いてみせよう。