（砂嵐画面。サーーーーーという雨に似た音。
　パシ、パシ、と、横一文字の波が走り、画面の焦点が合う。
　ショートカットの少女の顔、机を挟んで真向かいに座ったような視点


　……これでいいのかな？　撮れてる？　大丈夫？
　えーと、初回の報告です。
　残像領域へのジャンプは問題なく成功、機体損傷・操縦者損傷いずれもゼロでした。
　初回ミッションは成功。ただし、えーと、一緒にデータも送るので、もしかしたらもうわかってるかもしれないけど……、ちょっと失敗しちゃって。ほとんど、仮の僚機が倒してくれたんです。
　あの、機体整備の手順……こっちでの手順を、いくつか抜かしちゃってたみたいで、思ってたのと違うパーツがセットされてたり、色々。
　ごめんなさい。
　次は必ず、ちゃんと飛びます。

　それと……そう！　これを一番話したかったんです。
　あのね、博士、こっちに来る前、二つ、早めにやるべきことがあるって言ってましたよね？
　かかりつけの医者を見つけるのと、僚機を見つけること。
　ちゃんとできましたよ！　二つ同時に。……お医者さんの、ハイドラライダーを見つけたんです！
　ちょっと……結構？　変わってる……人、でも、親切な人。
　……。
　博士、博士にだから言うんですけど……、わたし、けっこう不安だったの。
　手や足が上手く動かないのなんて生まれつきだし、慣れてるけど……それでも時々、どうしても困ったことがあったりして。
　そんなとき、そっちでなら、博士かお医者さんか、ボランティアの人かに電話すれば、なんとかなるでしょう。
　万が一となったら……ママやパパにも連絡できるし。……そんなことしたら、一生家から出してもらえなくなるから、しないけど。
　でも、こっちでは誰もいないから……。
　だからね、すごく安心。
　それにね、びっくりするくらいね……、あ、これはまた今度！
　今度、その人の写真も送ります。ふふふ！

　じゃあ、今回は、これくらいで。
　整備士さんがそろそろ来るはずだから、様子を見に行ってきます。