―――また、負けた。
しかも今度は、任務の一部すら達成出来ず、大破した機体もろとも回収されるまで完全に意識を失っていたという、いっそ笑えるくらい無様な結果だった。実際、笑おうとしたら傷んだ臓腑が疼いて、ベッドの上で数十秒悶える事になったけれども。

「いや、こんな事してる場合じゃねーな。……いづみ、いづみは、ッて、」

　勢いのまま再び身を起こそうとして、骨が軋むような感覚に思わずと声を上げる。まだもう少し休んでいなさい、と冷静な看護師に呆れ混じりの溜息を吐かれて、仕方なくベッドに転がり直したが、気持ちは落ち着かないままだった。
　如何やら、いづみは無事らしい。オレよりは怪我も軽く、今は待機室で安静にしていると教えられた。だから大人しくしていろという事なんだろうが、その配慮も今は逆効果だ。
　だって、謝らなければ。数度の勝利で調子に乗って、今の力量に見合わない任務に挑戦したいなんて無茶を言ったのは、オレなんだから。

　むくりと、周囲の寝静まった夜中に身を起こす。まだ痛みはするものの、気を付けて動けば耐えられない程ではない。今夜まで此処で休めと言われたが、朝になって戻った事にすれば同じだろう。そもそも霧に覆われたこの世界では、昼も夜も随分と曖昧なものだ。
　足音を立てずに進む廊下には誰も居ない。人の気配がないという事が、時計の針よりも正確に今の時間を教えてくれる。
　いづみは寝ているだろうか。寝ていたら寝ていたで、取り敢えず顔だけ見て部屋に戻ろう。そういえば差し入れの一つも持たずに来てしまった事を今更に後悔しながら、辿り着いた部屋の扉へ手を伸ばす。
　何を言うべきだろう。何て言われるだろう。柄にもない緊張に、息を呑んだ喉が小さく鳴った。