シスターは足をぷらぷらさせている。
ソファに姿勢悪く腰かけて、眠そうに生あくびばかりしていた。

「あ、あのう………」

書類の束をチラつかせ、メカニックが困った顔をする。

「次の作戦行動の資料なんですけれども」
「今までのデータと、ニューエさんが話してくれた相機さんの話を総合して…」
「また少し、変えてみたんですよ」

眠気で泥沼の様に濁った眼を向け、シスターはのろのろと起き上がる。
袖に隠れた手を向け、それをよこせと態度で示した。

「どうぞ」

メカニックは丁寧に書類を渡し、自分の装着している端末から映像をポップアップさせる。

「今回の作戦行動は破壊工作です」
「破壊目標は六点確認されていますが、遊撃機が――」

「……目立った警備はいましぇんのねえ。本当に破壊の必要があるんだか……」

「クライアントは多くを語りませんから……」

「アズおねーしゃま、この地区で乗り回してたのでしょ？何かありませんでしたのん」
「最後の方はずいぶんキナ臭い作戦行動を提示されてたみたいですけど？」

そこまで調べているのかと、メカニックは内心冷汗をかいた。
しかし、これは別に嘘をつくところではない。
静かに頷き返して、記憶を掘り起こす。

「バイオ兵器と共に戦ったかと思えば、その後にバイオ兵器の鎮圧……いわば破壊を行いました」
「曰く、マッチポンプではなかったのかという噂です」
「報酬はともかく、あまり良い気分はしませんでしたね……」

「ま～あ、猫の皮も剥けなそうな顔してましゅもんね～～」

「何故そんな引き合いを出したかは問いませんよ。やめてくださいね」

シスターは悪態をつきながら、書類全てに眼を通す。
読む速度は非常に早い。視線をほとんど動かしていないというのに。
このシスターの眼がどこを向いているのか、把握できる人物なんているのだろうか。

「…説明は以上でしゅの？」

「そうですね、一通りは済みました。質問や掘りの浅い部分があれば、再度情報を整頓します」

「いりましぇんわ。地形のみならず、その地区の天気まで割合で示すようなデータ、初めてですの」
「まぁ毎回毎回、どっから引っ張って来るのか細かい情報出して来ますわね」

「…褒め言葉として受け取りますね。私は、それだけが取り柄ですから…」

頼りない笑顔で返すメカニックに、シスターがハーッと溜め息を吐く。

「その自信の無さもどっから来るんだか…」
「あ、そういえば先日、ナンパされてましたでしょ。寝たんでしゅの？」

「"何で知ってるかは知りませんけど"、す、すぐそうやってベットインに直結するの良くないですよ！」

「カ～～～ッ、これだからインドアは！」
「そこそこ良い反応貰ってたんでしゅから、ちったぁサービスしてやれ！ウブ女！穴あいてんのか？ええおい？」


「シスターなんですから少しは自重してくださいよ………」