あれから更に数刻。しっとりと全身に蓄積した疲労が休憩を所望しだす頃、二人は無事に目的地へと到着する。聳え立つのは石造りの円形の建物だ。情報によれば、この中に『星海ゲート』があるらしいのだが。


「なかなかに立派なもんだな」


　隣で口笛をヒュゥ、と鳴らすリードリット。確かに、とエールステゥは頷いた。ざっと見た感じではただの石造りの建造物だが、その所々に金属質なパーツが含まれている上に継ぎ目もほとんど存在しない。それだけでも現在の建築技術からすれば驚愕すべき事実である。明らかに古代技術なりそれと同等かそれ以上の技術でもって建てられたものなのは明白だ。


「ねぇ、リディ君」

「ん？」

「こういう感じの建物に覚えは？」

「無い、かね……少なくとも俺の故郷のとは違うな」

「かと言って、古代ソドム帝国関係の遺跡とも様式は違うね」


　所々にある金属質のパーツ。その部分に刻まれた文字を近づいて読み取ろうと試みるがどうにも難しい。文字や文法など、細かいところが今まで見付かっている既存の遺跡とは大きく異なるのだ。
　新手の文明のものだろうか。そんなことを思いながら中を覗き込む。生き物の気配はない。ただ、アチコチに金属質のパーツがバラバラになって転がっているのが目に映る。当時、研究員に襲いかかったという話の兵器群の成れの果てだろうか。


「こりゃ派手にやったな……あのオッサン共」

「まあ、ファストとガルだからねぇ」


　一応の警戒も兼ねてか。銃を構えながら遺跡の中を窺うリードリットの言葉に苦笑いを耐え切れず、小さく笑いながらエールステゥは肩を竦めた。物音ひとつしないあたり、本当に出てきた相手を全部破壊してまわったのかもしれない。
　転がっているパーツの一つを蹴り飛ばしながら中へと入り込んだ。やはり自分たちが建てる以外の物音はしない。通路は更に奥へと続いていたようだった。


「んじゃ、奥に行こうぜ」

「了解だよ。……じゃあ、エスコート、宜しくね？」


　にこりと微笑めば、リードリットの後に続いて奥へと進むのだった。




◆　　◆　　◆　　◆　　◆




「ガルム、また壊しましたね？」

「ぁー……」

「二度目ですよね？」

「ぅー……」

「そろそろ怒っていいですか？」

「え、まだ怒ってn」

「死ね」


　蹴り飛ばされた次の瞬間、なんでか俺の体は空高くに打ち上げられていた。さっきの作戦行動で見事に負けてぶっ壊れちまった『FENRIR』が横倒しにされているのがよく見えた。
　壊れたパーツを直す為に、というわけだがこういう姿はどうにも傷ついた獣を見るみたいで何かあれだなぁ……とか思っている場合じゃない。真下にはみるみる水面が近づいてくるわけで。

　……数秒後、整備用の雨水をためてるタンク（なんでか蓋が開いてた）に俺が見事落下したのはまた別の話だ。