霧194　電磁波28　体が思うように動かない

・ロケット砲は嫌いだ
・この配属先で初めての作戦失敗　凹む
・憂さ晴らしに未確認機と戦うことを決めた　そこでも大破したら意味ないけど
・パイルと操縦棺を購入
　→いつも思うんだけど何でCockpitじゃないんだ？　そこで死ねということ？

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　ウグイスが、大破した。

　雇われ先の医務室に運ばれ手当を受ける。ロケット砲を嫌なほど浴びせられた衝撃で全身を強く打ち、おまけに操縦棺のモニターに頭をぶつけたせいで額から血が流れていた。傷に消毒液を塗ったときのあの刺激が余計強く感じられる。その痛みから逃れようと軽く首を動かしただけで全身の筋肉が痛む。身も心もボロボロになりかけていた。
「次の依頼までずっと安静にしていたほうがいいですね」
　追い打ちを掛ける職員からの宣告。
「それもそうですが……私達傭兵は1日も休むことを許されていないんです。休みなしで、15日間……作戦を遂行する……そういう、契約なんです……」
　酷い我儘を言ったと思う。職員はそうでしたねと苦笑いしながら、自室に戻ることを許可してくれた。その際ストレッチャーに載せられながら戻ったのだが、通路で人とすれ違う度変な目で見られたので死んでしまいたいくらい恥ずかしかった。

　ベッドに横たわりながらスティーブンに通信を入れる。
「どうしたベティ？　今日は随分と弱々しい声じゃないか」
「ウグイスが大破したんだ。その衝撃で全身を強く打って、筋肉という筋肉を動かす度に痛くて」
「こっちにも情報は入ってきたさ……あの遊撃機、随分と見た目には似つかわしくない武器を積んでたね」
　遊撃機『レイピア』。可愛い名前と装甲が薄そうという断片的な情報と、前回3機まとめて相手してもそう苦労しなかったことから、今回も楽に突破できるだろうと高を括っていた。が、実際はウグイスをジャンプさせようと操縦桿を動かす前にミサイルの攻撃を受けてしまい、その衝撃に怯み全くと言っていいほど自分の思い通りに操縦することができなかった。その上レイピアはふわふわと空を飛んでいた。敵機の上から反撃する暇も与えず、矢継ぎ早に攻撃していく戦法……
「レイピアは、私の戦法と似たようなことをしていた。自分に負けたみたいで……くっ……」
　今まで敗北は何度も経験してきたが、今日の敗北は一際苦痛だった。精神的な痛みとこの額の傷が同時に私の気力を蝕む。
「落ち込むなって！　この前のスレイベルと同じように、明日からはレイピアの姿が見えない作戦を選んで受ければいい。それだけの話じゃないか」
「……あんたは前向きすぎる」
　いつもはスティーブンの態度を貶すところだったが、今日はその言葉が嬉しかった。
「どうも。ああ、それと明日対峙することになるかもしれない装甲飛行艇なんだけど……レイピアとスレイベルを足して2で割ったような機体らしい」
「はぁ！？　……危険度2・4・5は避けるしかないな」
　上から配布された明日の出撃の詳細を読みながら、『殲滅』の二文字に印を付けた。
「スティーブン、明日はレベデンコを潰してくる。レイピアに紛れてあいつもミサイル撃ってきたからね。それに未確認機……私も、一目あいつを見ておきたいし」
　痛む体を無理矢理起こし、部屋の隅に転がっていたタブレット端末を取りパーツカタログを確認する。
「レベデンコを潰す、ねえ……それは復讐、ってことかい？」
「どうだろうね。私は、敵機を潰さなきゃ生きていけない人間だから」
　復讐もあるが、負けた自分を認めたくない気持ちも、マイナスになった収入を少しでも取り戻したいという気持ちも混じっていた。私がハイドラライダーに志願した第一の理由はこの世界で生きていくための金が欲しかった、というものだったし。生活費を稼ぐ為には、結局は作戦の完遂が不可欠だった。