今日は、俺はファストと一緒に例の遺跡に来ている。残像領域っつーこの『世界』と俺達の暮らしてたあの『世界』を繋いでたゲートが在った場所であり、俺の今載ってるウォーハイドラとやらを拝借した場所だ。
　それというのも、こないだ結構な勢いでぶっ壊されたせいでパーツが足りないらしい。どうも補給基地（とかいう場所がある。傭兵的に集まるウォーハイドラ乗りを統率する為の組織ってやつのひとつなんだろう）にあるモノじゃ対応しきれない、という事なんだそうだ。


「何だってそんな面倒なことになってんだ？」

「さて。しかしこのウォーハイドラ『FENRIR』はあの遺跡で見付けたもの。もしかしたら此方の規格とは完全に同じ、とはいかないのかもしれない」

「つまりは？」

「我々の世界の旧時代文明の技術もまた、含まれているのかもしれないという事だ。だからこそ、純正の此方のパーツでは補いきれない。不具合が出てしまう……そういう事になる」


　なるほど、判るようなわからないような。
　何にせよ一筋縄じゃいかねぇ事はよっく分かった。


「実際、システム周りを見ても本来なら全て理解できなくてもおかしくないというのに、一部は私でも理解が出来る部分がある。そのどれもが、あちらの世界の旧文明遺跡で見付けたものに似通っている辺り……この予想は間違ってはいないと思う訳だ」

「あのゲートもその勢いで動かせりゃありがてぇんだがね」


　見上げた先には半分以上が地下に埋もれている巨大な遺跡がある。石と金属からなるその作りはどうにも異質だ。だいたいこっちの建物は何か金属質なのが多くて落ち着かないってのはあるんだけどな。木とか煉瓦とか、そんなのが当たり前だった（といっても俺様の故郷じゃそんなもんすらなかったんだが）からただ目を丸くするしかない有り様だ。何だよアレ、わけわかんねーよボタン押したら勝手に色々動くとかって。灯り一つだって火すら使わねぇとかなぁ……。
　どっちにせよ遺跡の仕組みはよく判らねぇ。俺様ならともかく、そっち系の研究を向こうの世界でもやってたファストですら完全にわかりゃしねぇってんなら時間もかかるってなもんだぜ。のんびり行くしか無いんだろうが、やれやれだ。


「で、パーツってどんなのだよ」

「そうだな、とりあえず形状としては……」


　説明を受けながら遺跡の中に入り込む。中は無駄にごちゃごちゃとしていて、どこに何があるのかサッパリだ。探るために覗きこんだ部屋のアチコチに無造作に転がっている動かなくなっている機械達は、向こうの遺跡で霧に紛れて俺たちを襲ってきた奴等とよく似ていた。


「ソレらしいもんが見つからねぇな……」

「もっと奥なのかもしれない」


　替えの利かない、探しに来たパーツは結構あのウォーハイドラの中でも中枢に関わってくる大事なもんらしい。ともなれば、こんな表層部分にゃないのかもしれねぇな。俺様は転がるガラクタ連中を適当に押しのけ、蹴りよけて先に進む。少しも歩けば巨大な竪穴が見つかった。


「何だこりゃ。欠陥品か？」

「違う。多分これは……地下に向かうための小部屋が本来なら登ってくる仕掛けだろう」

「でも今はなにもないぜ？」

「完全に動き自体が止まっている遺跡だ。その小部屋も動こかない、という事かもしれない」


　ヒュウ、と下方から風が来る。少なくとも続く先がある証拠かもしれない。荷物からかなり頑丈なロープ（金属製のロープとかこっちに来て初めて見たぜ……）を取り出せば下方へ降りる準備を進めつつ思う。
　やれやれ、面倒なことは起きてくれるなよ？