……のニュースです……人気の……園で、カピバラの赤ちゃん……


　「……む。いかん――もう、こんな時間か……」


　前日の“訓練”で、文字通りシミュレーター内で七転八倒させられた反動で泥のように眠りこけ、危うくミッション前のブリーフィングまであと僅か、という時刻にようやく目を覚ましたエアロ。
　かろうじて装甲服こそ外していたが、汗すら流していない体たらくの自身を省みて、湯温も上がり切っていないシャワーを荒っぽく行水のように浴び、身支度を整える。

　「今日は早めに片付けねばな……
　　訓練のせいで本調子が出なかった、などということになったら今度は本当に吐くまで逃がしてもらえなくなる」

　愚痴りながらも、その口調にはどこか満足げな気配が滲んでいた。
　戦いの技術を磨くこと――それに留まらず、『戦い』そのものに飽く事のない執念と執着を燃やす、そのある意味歪んだ熱意。
　教官役の老傭兵が聞いたら、「やれやれ」と言いたげに肩をすくめたかもしれない。


　　（本当なら、ワシが教えるまでもなく“あいつ”の『生き残り方』に学んでえぇんだがのぉ――
　　　お前ぇさんはどうも、そればっかりは覚えが悪くてかなわんぞい）

　　（今この場で教えられる限りは叩き込んだでなぁ。
　　　あとは、お前ぇさんがしっかり“思い出す”ことじゃぜ、“２ｎｄ(セカンド)”――
　　　その“血”に刻まれとる、初代“ＡＥＲＩＡＬ”のやり方をのぉ！）


　「だから貴方は苦手だよ――デニス。
　　私の覚えていないことも、『あの人』のことは何でも“知っている”んだからな。
　　……いったい何度、うらやましいと思ったことか」

　言いながら、手際よく装甲服の各パーツを身に帯びてゆく。
　最後に、角型の無骨なヘルメットを被って、全身が鋼の塊へと変ずる。


　「いつも我慢しているんだぞ。“ワイルド・デン”――
　　貴方を、『あの人』の最後の“親友”を……代わりに『父』と呼んでしまいそうになる、その衝動を」


　部屋を出る間際のその呟きは、あまりに小さすぎ……誰の聴覚に記録されることも、なかった。