パーツは程無くして問題無く見つかった。パーツ倉庫の奥の方に転がっていたんだから楽な仕事もあったもんだ。いつも宿で受ける遺跡関係の依頼もこうなら楽なのにな。まあ、その宿での依頼自体が随分と前の事のように感じちまうんだから、参ったもんだが。
　この世界にも多少は慣れてきたが、やっぱり俺らの居るべきはあそこだって良くわかる。ふとした時に、向こうでの暮らしを思い出して染々しちまうんだからな。

　その為にも動かねぇといけない。ファストと二人、遺跡の中を散々探して回った。上の階層から下の階層まで、隈無くとはいかねぇがそれでもかなり注意しながらの探索だ。しかし……、


「見付からねぇな」

「どういう事だ？」


　険しい顔で『門』を見上げるファストは呻く。俺もその隣に座り込んだ。さすがに疲れた。若くねぇ身であちこち走り回って散策を休むこと無く続けてりゃあ、そりゃ疲れも溜まる。仕方の無い話ではあるよな。
　もう諦めて帰りたい。そんな気分で遺跡の床にごろり、と横になったその時だ。


　低く唸るような音が聞こえたのは。



※　　※　　※　　※　　※



「エルゥのねーさん」

「その呼び方、なんかむず痒いからやめない？　リディくん」

「アンタがその君づけ止めてくれたらな。……それよりも、見ろよ」


　遺跡最奥。『門』に取り付くようにして調査をしていたエールステゥとリードリットの両名は、片方の上げた声で動きを止めていた。何か面白いものがある、と手招いた彼が指差す先を覗き込んでエールステゥは目を丸くする。


「これって」

「通信用の設備、だと思うぜ。しかも何でか生きてる」


　そこには石と金属の壁にめり込むように小さな小窓があった。すぐ下には小さなボタンのような突起が一定の感覚で綺麗に整列している。ボタンの表面に刻まれた古代の文字らしきものに目を止めれば、エールステゥはうなった。


「これが制御装置？」

「多分な。……これが起動ボタンかね」


　手慣れた動作でリードリットがパネルを弄る。彼はこういった機械の扱いには滅法強いのだ。古代文字が読めるわけではないのに何となくでニュアンスを理解し操作してのける。曰く、本来の世界で似たようなものを弄ってたから……らしいが。
　暫くの時間をおけば画面に光が走った。『門』だけでなく、遺跡全体が揺れた気がして二人は顔を見合わせる。やはり休止していただけでこの遺跡は生きていた、と言うわけだ。

　一応、警備の兵器類が現れるかと最初こそ警戒はしていたがその様な気配も感じられない事にエールステゥは肩を竦めた。警備が杜撰なのか、先客が全て使えなくしたのか。何にせよ余計な手間はかからないからありがたい。
　二人は光るパネルを操作した。良くわからないなりに起動画面を終えて、そして写し出されたものは…………




「エルゥ！？」
「おい、リディ坊主も一緒だぜ！？」

「ファスト！？」
「教授にオッサンじゃねーか！？」


　画面越しに、声が上がったのは数秒の沈黙を挟んだ後のことだった。