◆DAYBREAK◆
「最終防衛線突破まで、後――2時間は持つかな。」
各地での同時多発テロ。それは、量産された原初の悪夢。
未確認型ウォーハイドラ『ミスト・アヴェンジャーⅡ』と、それに付随する新型バイオ兵器による無差別テロ。
囮にした工房も、無差別テロの標的の一つとなっている。
空に隠したベルフレア級工作艦「晴空号」から、私たちは防衛用の無人機の状況を確認している。

「工房側到達予想時間、1300。　プログラム側、どんな感じ？」
「次元航行システムの最適化は完了しています。次元航行システムの起動は可能ですが、次元航行システムのチャージに時間がかかります。」
懸念となっていた次元航行システムの最適化は完了しているが、次元航行システムを起動するためのエネルギーチャージに時間がかかる。
他のシステムに回すエネルギーを切ればチャージも早くなるが、この状況でそれは悪手だ。

「了解。　チャージ時間中、回避航法でダメコンお願いしていいかな。　こっちで時間稼ぐ。
　――無人機展開開始。　移動シーケンス移行。
　在庫に回してたアカキリシマエンジン、積み込んであるから使っていい。　余剰使って頼んだ。」
「了解。こちらも予備のアカキリシマがあるので、それを晴空号に積み込みます。」
余剰のアカキリシマを搭載し、他のエンジンとの相性を調整しつつ…後は、やる事は一つ。

「OK。　後は――『この世界での』ラストダンスだけかな。
　ミストアヴェンジャー補足。　戦闘シーケンス移行。至高回路、起動！　――CI-AWH-001『Demiurge』、出るよ！」
「ターゲット・アルファオメガを捕捉しました。これより戦闘行動を開始します。
　CI-uWH-001『きりしま』、出撃します」
工房のシャッターが開き、使い捨ての緊急展開ブースターを外付けした2機のウォーハイドラが戦地へと飛び立つ。



主機、補機どちらも正常稼働中。
臨時接続した補機も異常無し。

次元航行システム起動開始。
エネルギーライン接続。
次元航行システムチャージ開始。
エネルギー充填率25%。
「――今期もありがとう。　霧島さん。　無事脱出できたら、乾杯しようね。」
エネルギー充填率50%。
「そういうの、死亡フラグ、ですよ？」
エネルギー充填率75%。
「ははは。　そうだったね。　――じゃ、言い直すよ。　生きて帰る、絶対にって。」
エネルギー充填率100%。
「ええ。ここからが、始まりですから」

航行先へのスリーウェイ・ハンドシェイク開始。
SYN送信………完了。
SYN ACK受信………完了。
ACK送信………完了。

次元航行システム起動します。