ENo.0071　パアム・ライザ

軍からの提案とは、技術教唆と資金援助だった。
作業用アームの物として開発された、脊髄直結型の入力機関。
更に喉から手が出るほど欲しい研究費。

科学者は歓喜した。脊髄から動作を読み取り、入力する事ができれば、わざわざ外部入力機器を搭載せずに済む。
更に言えば、それを行う事が、乗り込む上でのメリットとなるのだ。

信条と、実情を一気に解決する手段として、科学者は飛びついた。
軍だろうと、なんだろうと関係なかった。


しかし、思うように事は進まない。
読み取り精度に欠ける、反応速度に欠ける、動作精度に欠ける……。
ナノマシンを用いた姿勢制御だけは上手くいっていたが、肝心の操作系統だけが上手くいっていなかった。

更に、軍という大きなスポンサーが付いたことで、かかる重圧は数倍にも膨れ上がっていた。

次第に、家に帰ることも少なくなり、煙草の本数も増えていった。



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指示灯のような小さな赤光が灯った後、夜の闇に煙が巻き上がっていく。
部屋の明かりに照らされた煙は、暫く頭上を舞い、やがて霧散していった。

曰く、酒は百薬の長というが、煙草は百害あって一利くらいあるかどうか、らしい。

例えば、味覚を鈍くするとか。
普段の食事を――今日の朝食に限っても振り返ってみれば、なるほど、
濃く入れた珈琲、甘いジャムをたっぷりと付けたトースト、塩からいベーコンと、見事に刺激物ばかりで。
確かに、吸ったあとは口の中が煙草一色になるから、舌が鈍くなると言われれば合点がいくしかない。
「味覚は確実に鈍麻している気がしますね……。」

また、肺に悪いという。
「プレディにも「それ、苦いから止めろ」と言われますし、最初に吸った時は、なんというか喉にしみましたから、絶対身体に良い物では無いとは思います……。」
ただ、たまに吸うくらいならば、そう悪い物ではないだろう。

煙草は嫌いではない。
かと言って、好きかと言われたら、好きではない、と答えるしかない。
ただ、匂いは好きだ。
だから、こうして時々煙をくゆらせる。
吸うときは口の中に煙を留めて、余分な煙を吐き出した後、残り香と僅かな煙を深呼吸と共に吸い込み、楽しんでいる。
基地の、オイルと金属と赤錆の臭いも一緒に入り込んでくるけれど。

昔、父と話すとき、父の膝に収まろうとしたとき、いつも漂ってくるのは父が吸っていた煙草の香りだった。
だから、煙草は父の匂いだ。思い出は決して多い方だとは言えないけれど、だからこそ、懐かしさを感じる。

ただ、自分で煙草を吸って初めて気がついた事は、銘柄によって匂いが全然違うこと。
ハーブのような香りから、甘いお菓子のような香りまで、それこそ千差万別だった。
勿論、父が吸っていた銘柄なんて分かるわけが無いから、手当り次第だ。さらに言えば、同じものが此処で販売されているかも定かではない。

今吸っているのは記憶の中で、その匂いに最も近いと思った物。今日はこの気分。
何せ探すために買い漁った煙草は何種類、何十本と残っているから、気分によって吸い分ける。


すこし、落ち着きたい時、何か嫌なことがあった時、このフレーバーを選択する。


……何せ先々週の戦いでショック受けて暫く動けませんでしたから！

高電圧対策をすっかり忘れていたせいで、整備費諸々で足が出た。
更に言えば先週は狙撃砲の弾薬費がかさみすぎて足が出た。

……しっかりしないといけませんねー……。

気が重くなる。それでもなんとかなるだろう、と楽天的でいられるのは、煙草を吸っているからだろうか。

言葉はわからなくても作るものなら心は通じる。
そういう人たちの組織がここ「グロッソラリア」
制御とか整備が好きな人はおいでください。
どちらか一方だけでも結構！
作れ作れ！

※ユニオン活動は制御２　整備３です。
RPとかはするかもしれません