ENo.0192　ルーカス・ホワイト＆スカイシーカーⅡ

『本日も一日、お疲れ様でした』
操縦棺の中に、電子合成音声が響く。
女性の声。スカイシーカー・エンブリオに組み込まれたパイロットサポート用ＡＩの発するナビゲートボイスだ。
戦闘中のオペレートだけでなく、日常会話まで可能なようにプログラミングされているらしく、いつもこうして何気なく語りかけてくる。
「ああ。ありがとう、スカイシーカー」
今日の戦闘を終了し、一度拠点へと戻ってきたルーカスは、簡単に買い物を済ませるとスカイシーカーの元へと帰る。
彼にとっては、この操縦棺が家のようなものなのだ。
少年は最低限の栄養をすぐに補給出来る、ショートブレッドじみた栄養調整食品を口にしながら棺内のメンテナンスを始める。
『今日の食事は、一段と簡素ですね』
「そうかな？　これ、結構好きなんだけど」
『若いうちは、しっかりとした食事を摂らなければ成長出来ませんよ』
「確かに、身長が低いのは気にしてるけどさ」
『だったら尚のこと、もっと食事に気を遣うべきです』
「……スカイシーカーって、学校の先生みたいなこと言うよね」
『パイロットの体調管理も、ナビゲーションＡＩの仕事ですから』
「はいはい。……ちゃんと食べるよ。そのうち」
『そのうちではなく、具体的な日時を指定してください』
「あぁ、もう！　メンテナンス終わらせないと寝れないんだから、静かにしててよ！」
『メンテナンスが終わったら、もう一度質問しますからね』
「はいはい。まったく、ＡＩっていうのはこんなに口うるさいものなのかな……」

ぶつくさと文句を言いながら、少年はメンテナンスを進めていく。
夜が更ける。明日もまた、戦いが始まる。
少年と機体は、終わりの見えない戦いの中で、束の間の休息を噛み締めていた。

この霧に閉ざされた残像領域にあっては、一笑に付される願い。
夢物語に紡がれる、霧の果て。天へと至る風景。
紺碧の空と、降り注ぐ光を求める少年が、此処に一人。

君は、この少年と共に、戦いの間隙に『空』を目指してもいいし、
多少整備の心得がある少年の手を借りて、自身の目的の助けとしてもいい。