ENo.0222　クノア＝

●月×日

今でも、時折貴方のことを夢にみます。

まどろみの中目を覚ますと、隣には貴方の寝姿が変わらずそこにあり、
大きな体なのに子供のような顔で眠っている貴方の鼻梁を、私の指が優しく撫でるのです。
くすぐったそうに顔をそむける貴方を見て、この幸せが永遠に続けばいいと思いました。

私は戦争が嫌いでした。
その戦争に駆り出される貴方のことを思うと、好きになどなれませんでした。
戦場に向かう貴方の背中はいつだって頼もしくて、
でも頼もしいだけ、その肩に乗るものだって大きいことがわかって。
私はそれを送り出すことしかできなくて。
振り返らず遠ざかる背中のことを思うと、寝台の上で私のか細い腕が貴方を逃がすまいと背中を抱かせるのです。

嗚呼。
どうか神様。
この人を奪わないでください。
私に。
なんの価値もなかった私に、彼の妻という役割を与えてくれた。
私の最愛の人を、どうか奪わないでください。
私に全てを教え、私に全てを与えてくれたこの人を。
どうか。

どうか。


そんな呟きを、何度も何度も吐きながら。
隣に誰もいない寝台の上で目を覚ますのです。
撫でる鼻梁も、抱く背中もない。
そんなこと、一番誰よりもわかっているはずなのに。
捨てきれていない弱い自分が、今でもそんな夢を見させるのです。


その夢を見た日は。
少しだけトリガーを引く指に、力が籠ります。

私は戦争も、ハイドラも、この霧も。
何もかもが、今も大嫌いです。


【――音声メッセージが送信されました】

【送り先が不正です。宛先を確認してください。】