ENo.0070　ユリア・クールハート

『ＴＵＲＮ１４：お前が消えて喜ぶ者は』

「……？」

『トリグラフ』に記録された戦闘データをチェックしている時に、ふと、気づいた。
　ここ数回の戦闘中、自分のバイタルが、電気が瞬断されるかのように停止している瞬間がある。そのタイミングを調べてゆくと。

「被弾、した時？」

　そういえば、気にした事も無かったが、『テンペスト』に狙われた時も、未確認機に機体を焼かれた時も、襲い来るだろう衝撃や熱い痛みを感じる事無く、すぐに持ち直して次の行動へと移っている。
　これは、もしかして。

「……エルシス。セロ」

　少し低めの声でモニタに語りかければ、いつもの電子色の彼らが映る。

『どうしたの、ユリア？』
『……』

　こちらの意図に気付いているのかいないのか、少年は笑顔を見せ、青年は無言を保っている。

「お前達」

　ほんの少しだけ、怒りを滲ませて、その言葉を口にした。

「私の傷を、受け負っているな？」
『……』
『……』

　二人は黙り込み、答えは即座に返らない。それが答えだ。
『接続者（スタブ）』の彼らが持つ異能（スキル）。それがこの世界でも発動している。
　つまり、セロが『転移』でユリアの傷を引き受け、エルシスが『回復』でそれを癒している。そうしてユリアが即座に原状復帰して、戦闘継続できるようにしていたのだ。

「何故だ！　何故黙っていた！？」
『……だって、知ってたら、ユリアは「やめろ」って言うでしょ？』
『俺達の「異能」でお前が支障無く戦闘を継続出来るならば、それに越した事は無い』
『これこそが、「トリグラフ」が一人のライダーと二人の制御AIで動くシステムである理由なのだから』

　絶句するしか無い。
　この機体は完全に、『自分達三人』の能力をもって稼働するように造られている。
　誰が、何の目的で、何故この世界に『トリグラフ』を用意して、自分達を集めたのか。

「……『やめろ』と言っても、お前達は聞かないんだろう」
『当たり前だよ』
『使える能力を宝の持ち腐れにして生き残れる程、この世界は甘くはない』
『それに今まで、ユリアが傷ついても、僕は直接「回復」を使えずに見ている事しか出来なかった。セロの「転移」だけが君に干渉出来て、電子システム同士なら影響しあえるんだから、僕は「回復」を使うよ。要らないシステムだって思われたくない』
『機体の損傷までは引き受けられないので、ミリアサービスの整備に頼るしか無いがな』

　誰に何を求められているのか、今は全くわからない。
　だが、わからないなりに、今出来得る全ての対処をしてゆくしか、生き延びる術は無い事も、わかりきっている。
　だから。

「わかった」

　二対の瞳を見つめて、決然と、口を開く。

「すまないが、これからもお前達を頼りにする。出来るだけ攻撃を受けないようには、善処するから、頼むな」
『ユリアの為なら』
『承知した』
「ならばまずは、またアセンブル案を組んでくれ。最近機体が重くて、上手く動けている気がしない」
『ああー、射撃ばかりに頼ってたから、機動力が無いんだよねえ……。避けられなきゃ、被弾は免れないし』
『砲塔を捨てて、ブースターを買う手もあったな。先日のマーケットに、女性の豊満な胸部を映した動画が売られていて、突撃態勢効果が絶大だと大評判だったそうだ。惜しい事をした』
「それ女が買っていいものじゃないだろう！？」
『なんでセロはしれっとそういう事言うの……？』
『俺は女体の胸に興味は無い。敢えて言うなら腰の』
『えっ、君の性癖の話が始まるの？』
「何でシリアスに話を運んでたのに、こういうオチになるんだ！？」

To be continued...

Reinclaft-Millia Service

数年前にできた、残像領域の片隅の整備屋。
相場よりほんの少し高い値段で、ウォーハイドラのみならずライダーも整備する。
早い話が、機体のメンテをしに来るついでに、店主が常々作りすぎる飯のおこぼれにありつける整備屋である。
飯だけの利用も歓迎だが、この店にはメニューはない。店主が作りすぎたその日の飯が出されるだけである。

！店および店主（ENo.4）の既知可
！ユニオンに参加せずメッセで利用する体も歓迎
！ロールするキャラを推奨するかも

細かいこと：http://midnight.raindrop.jp/milliapede/union.html