ENo.0415　オプロトポス

「どうして、似ていないんだろうな」

見慣れた朝食の席で友人がそう呟いたのは、ちょうど辺境軍閥の降伏を告げる一報が届いた頃だった。

「なに？」
「えっ」
「似ていないって、何が？」

私がそう尋ねると彼は一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐにまたいつもの好奇心旺盛な笑顔に戻って答えた。

「例の機体、オプロトポスとバイオ兵器さ。どっちも生物を利用してるだろ？」
「うーん……」

彼からの返答を聞いた私は困惑してしまった。そんなことは考えたこともなかったのだ。

「そりゃバイオ兵器は生身で戦う生物そのものの兵器だし、オプロトポスは生物をパイロットとして利用しているだけで戦ってるのはハイドラだ」
「うん」
「けどどちらも作ったのは人間だろ？ 同じ所から出発して、どうしてあそこまで別物になっちまうのかねえ」
「それは……」

正直言って、私にはわからなかった。
同じように作られ同じように戦う二つの兵器が、なぜこんなにも違った思想や設計を持つに至ったのか。
両者を分けたのは何か。

そう考えている内にふと思いついた一言。
どうしてか自分自身がその意味を考えるよりも早く、私はその言葉を口にしていた。

「それは、目的なんじゃないかな」
「目的？」
「そう、目的。多分、オプロトポスには目的があるんだ」

オプロトポスの目的。
私の発言の意図がわからず押し黙る友人を前にして、私自身もその意味がわからずにいた。
言葉が頭に浮かんだからそれを言ったという、それだけなのだから当然だろう。

『オプロトポスには目的がある』

ただその時はなんとなく、しかしはっきりと、そう感じたのだ。
少し怖くなった私はその考えを無理矢理頭の隅に追いやると、対面に座った友人と話すことに集中した。

「いや、なんかほら……そう思えただけかな」
「えっ？」
「どうしてそんなこと考えたんだろう。あの機体のパイロットは、人間どころか知的生命ですらないのに」
「うーん、そうだなあ……でも面白いと思うよ」
「面白い？」

「だってそうだろ？ あれに目的があるんだとしたら、それは一体何なんだろうな。
人間でもなく、AIでもない。
生物の集合体に過ぎないオプロトポスのパイロットは、何を望むんだろう？」

不明なユニオン