ENo.0280　エステラ・ヴォルフラント

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『禁忌戦争』終盤━━━


暫く気を失ってたらしく、目が覚めた時には霧の彼方から現れた異形達は沈黙し目の前にはメルサリアのドゥルガーとその周囲に不明機が多数立っているのに気づく━━━


エスティ「この状況を打破するには……やっぱりやるしかないか……Ex、アルマにもう一度だけ通信開いて」


通信を開くが音声通信は酷いノイズでとても相手に聞こえるとは思えない、それでも構わずメッセージによる通信を送る━━━


エスティ「━━━━━━━━━」


……どうしても伝えたかった事を送る、そして再び機体を動かす━━━


エスティ「Exも……最後まで付き合ってくれてありがと」

メイン動力の欠如、度重なる戦闘によるフレーム内部への重度の損傷、そして不明ユニットのオーバーロード……ここまで一緒に戦ったもう一人の相方もそう長く持たないのは嫌でも分かる状態だった、アルマにはフラグみたいなセリフはやめて欲しいと言ったのに土壇場で自分がそんな事言ってたら世話が無いと自嘲する


Ex『生存確率の低下する言動を感知……エスティ、死亡率が上がるような言動は謹んでください』


………AIに怒られた。


エスティ「……ごめん、それもそうだ。よし……今まで通りアルマの援護をメインで動く、行くよ!!」


私の言葉に返事をするように鋼の相方が低いアクチュエーター音を鳴らしなら動き出す

普通に考えたら絶望的な状況には変わりないが、なぜかこの時だけはどうにかなる気がした。

メルサリアの理論が間違ってたらとか━━━

アルラウネが育つ前に異形達が世界を埋め尽くしたらとか━━━

この先に未来なんて無いのかもとか━━━

そんなの全部ひっくるめて私とExとアルマと……名前も知らない戦友達なら絶対どうにか出来る、そんな予感がしてた


……でも今思えばちょっと恥ずかしいな、これ

一瞬脳裏にそんな事が過ぎった気がしたが、お構い無しに戦端を開くように機体を突撃させる━━━

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～『禁忌戦争』終戦より5年後～


━━━『純白』の名を冠した漆黒の機体が何処の行ったのかは未だに分からない、いや……共に戦場を駆けた相方だけは行方を知ってるかもしれない、まぁあの二人なら生き残ってればそれなりに仲良くやってるだろう


リスティ「……という訳で『Ex-Blanche』は依然としてシグナルロスト、まぁ他のWHも行方知れずの機体が多いですししょうがないと言ったところでしょう」

リスティ「…起動試験から今まで監視を続けてましたが5年間音沙汰無しという事で計画の継続は不可能と判断、全作戦の終了を宣言、上にも報告をよろしく」

それだけ言いモニターを切り、本来あるべき機体が不在のガレージの方をぼんやりと眺める━━━

リスティ「まぁ……何となくは予想してましたけど、『本当の意味』での自由を今度こそ掴めるといいですわね、アルマとも上手くやりなさいな」

━━━いつかまた二人が戦いに巻き込まれるかもしれない、その時自分がサポート出来るかは分からないけど……ささやかな贈り物だけでも用意しておこうか

静かな部屋でコンソールを叩く音だけが響く、私情を持ち込むつもりはなかったが気づけば深く肩入れしてたあの二人の為に━━━




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『日時：不明　場所：不明』
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……体中が痛い……コクピットブロックごと投げ飛ばされるとは思わなかった……


霧の晴れた蒼空の下で不満そうに呟く、メルサリアが最後に起こした時空震……アレに巻き込まれた時に咄嗟にExがコクピットブロックを引き摺りだして掴んだままマニュピレーターごとアルマの方にパージしたせいだ、おかげでアルマと同じ場所に出れたみたいだけどここがどこだか分からないし、Exもパージした右手だけを残して何処とも知れない所に飛ばされたと考えるのが普通だろう……


アルマの機体……『ハイウィング・メイジマッシャー』もメルサリアとの戦闘ですぐには動かせる状態には見えなかった

外に出てボロボロになった服を着替えながら周囲を見渡す、霧も晴れて敵らしいモノも見えないがWHを失った私と機体がボロボロのアルマで今すぐ何か出来る事なんて何も無いように思えるけど…この先どうするかだけは考えないと……

……え？とりあえず祝杯？無事生き残ったから？

いやいや……場所も分からないし機体も無くなったのにそんな事してる場合じゃ……え？そんな状態だからこそ？

……アルマの考える事はたまに良く分からない……でも、だいぶ前に何か約束した気もするし……

……カチャっと、何処から持ってきたのか分からない缶ビールの蓋を開ける


『ごくごくごく…ぷはー！おいしい！』


……時々思うけどアルマってお酒を飲む時ちょっと年寄りっぽい、むしろアンドロイドなのにお酒飲んで大丈夫なのか？とか思いつつ自分も缶ビールに口を付ける


「……やっぱ凄く苦い、変な約束するんじゃなかった」


………でも、悪い気はしなかった、この変な約束のおかげで最後まで諦めずに頑張れたのだから






━━━この少し後に航空機の音が聞こえた、そして……私達の戦いはまだ終わってない事を知る━━━


next mist of war
Gremlins Gift -Return of the Ambient Mist-