ENo.0420　ジャバロスとオプロトポ子

トリガラノスはいつも通りに軽快な動きをしていた。俺の判断にも間違いはなかった。
だが、計算外の事態はいつでも起こり得るものだ。

三回。
それがトリガラノスが機体性能上発動可能な緊急回避機動、つまりクイックドライブの回数だった。
だが実際に発揮できたのは二回。
何の因果によってか失われた一回が生死を分けた。

敵の攻撃が命中したあの時、俺は操縦棺の壁を突き破り機体の外へと放り出された。
損壊したトリガラノスの爆発や攻撃の余波ではなく、トポ子に凄まじい勢いで殴り飛ばされたことによって。
あの細身のどこにそんな力があったのかは知らないが、搭乗者を守るためにそう行動するよう機能として搭載されているらしい。
とにかく、俺はトポ子に命を救われ、そしてトポ子は死んだのだ。
あの失われた一回によって。


「それで……」



「？」

「なんで生きてるんだ！」

「いや死にましたよ？ あれ、言ってませんでしたっけ」

「何を？」

「ほら、私って人工生命体じゃないですか。だから死んでも大丈夫なんですよ」

「そ、その理屈はおかしくないか」

「まあ個体としては確かに死にましたけどね。そしたら新たな個体を再生産すればいいんです」

「サイセイサン？」

「そう、再生産です！」

「はあ……よ、よくわからんが大丈夫なんだな？」

「はいっ！ ブリクトム社の続く限り私は何度でも再生産できますからね！ 心配御無用ですっ」


またよくわからないことを言っているが、無事なら何よりだ。

性格は相変わらず好きになれない。
しかし戦場を共にするパートナーとしては俺より、あるいは他の誰よりも、遥かに優れているのかも知れない。
サイセイサンとやらをしたあいつが元気にハンガーへと向かうのを見てふとそう思った。

ブリクトム社が新たな事業のために新設したハンガー。

設備は十分に整えられているがそのほとんどが中古品で見た目は汚い。
時折脱ぎ散らかされた衣類が転がっていることもあり、清潔感のなさに拍車をかけている。