ENo.0450　スロア・カウリ

(ENoEno137の日記です)

炎がハイドラを喰らい尽くす。そんな光景は残像領域では頻繁にあることであり、余程のネームド機体でもない限りニュースには流れない。
齢3すこしになった程度の幼子にも、大人たちの酒話からそのようなものなのだと耳かじっていた。それが弱肉強食の世界のルールであり、羨望の対象となるハイドラライダーにも逃れられない理なのだ、と。

もしくは、未来が大量に貯金されうる子ども達には、残像になって闘い続ける戦士がうまれるに思っていたのかもしれない。
どこからか顕れて、レベデンコの装甲をむしりとる肉食獣のように。あるいは、必殺の弾丸を絞り射ち、虚空に消える狙撃手かのように……

火花が、羊を焼いていく。その搭乗者がいなければ、身近な者でなければどれほどよかったものか。
「おねえちゃんが表彰台にお誘いしたら、二人ともきてね？」
死者の言葉は、永く残される者たちにこびりつく。

「どうして………そこまでやるの？」
「はやぁ！！にげてぇ……」

対戦相手の事情など唾を吐き捨てるがごとく、闘技場には殺意と敬意のみが持ち込まれるコロッセオ。これまで【撤退】できていたのは偶々運の良さに味方されていただけだった。次もまたその運が来ることは保障されない。絆創膏と包帯と湿布まみれで帰ってくるとは限らない。


ーーーこれは、街の長階段ですっ転んでしまったんですよ？？？本当ですよ？？
幼子ふたりの母親は、実はコロッセオ帰りの傷であることを承知していたのだが。隠したいという彼女の意思を尊重して合わしていた。
(ずっと安全装置を切って闘って………どう止めればよかったの？無理やりにでもすればよかった？)
悪夢のような現実を目にしたショックに泣き止まない双子を母親は抱く。

【ヘレナの視点】
こっそりとイヤホンラジオから、闘技中継を聞いてきた。レストランの客にコロッセオ中継を流す店だと思われるのは彼女には都合がよさそうではなかったから。
おおっぴらにできるのをどれほど待っていたか。ルカがナンパトークの流れでコロッセオの話をしないよう時折話を詰まらせていたのだし。知らないフリをして応対するのは私も頭を悩ませたのだから。

私も婚約前にコロッセオに参戦したのはなんどもある。打ち合わせをして悪巧みをしたこともあった。
ーーーたくさん聞きたいことはあったのにな？

ようやく白状して(痺れを切らして誘導尋問紛いにさせたが)夫婦で彼女を挟んで徹夜で質問タイムしたばかりなのに。

残像は繰り返すだけで何も答えないよ。

飲食に関わって絶ちきった煙草を吸いたくなってきた。空を見続けないと流れ出すじゃないか

出資していたハイドラが残像に！物は帰ってこないし、遠隔操作するバイオ棺が燃えちゃった！！

借　金　返　済　生　活　始　ま　る　

※反応ユニオンです、購入は適当(適当)