「あ、あの、ニューエさん……」

おずおずと問うメカニック。
それに対し、濁った声で返すシスター。

「…なんでしゅの？わたくし、機嫌が悪くてよ」

（ひええええ、眼で殺されかねない……！！）

メカニック、びびりまくり。
それが相手をイラつかせたのか、視線が肌に突き刺さる。

「いえっ、その……ニューエさんが組んでいる相機の方のこと、その…」
「…ちゃんと聞いたこと、無かったなあって…」
「それだけ、それだけなんです！……そ、そうだ。珈琲、淹れましょうか？」

メカニックは、まるで尻尾を下げた犬のような態度をとる。
それに毒気を抜かれたのか、シスターはあからさまな溜め息をついた。

「……雇いの牧師。この界隈で拾ってきたＷＨ乗りでしゅわ」
「見た目は白人系の黒髪。男。年齢は40代よりは若い。腹に一物抱えてるタイプ」

口調のトゲは多少取れたものの、シスターは淡々と語る。
その唇は牙を剥いた獣のごとく、歪んだ冷たさを含んでいた。

「銭ゲバ。まっさきに契約に飛びついて来たヤツ。金の切れ目が縁の切れ目」
「……アズねーしゃま、わたくしの話を聞いてますの？」

メカニックの疑念が、確証に変わった瞬間だった。
シスターは無言で瞬きをするだけのメカニックの胸を、むんずと掴む。

「ひっ、わあああああ？！！」

「質問しといて返事がねーとは良い度胸じゃねーでしゅか？ええ、おい？」

「ごごごごごめんなさい！ごめんなさい！！」
「ちょっと聞いたことがあるなあって！考えてしまって！」
「だから、抓るのやめてください！痛いのヤです！何ですかその義手！！」

「っはァ～～～、ホンットに無駄乳でしゅわね！ちったぁ金にしてこい！媚びてこい！！」

「お断りさせていただきます！」

「役立たず！腕が優秀じゃなきゃ売り飛ばしてるとこでしゅわ！さっさと珈琲およこし！！」

「役に立ってるなら役立たずじゃないじゃないですかぁ……」

「無駄口叩くと夜の繁華街を歩かせましゅわよ？」



逆にその方が、あの人は見つかるかもしれないと思いながら
メカニックは苦い笑みだけをシスターに返した。