ぼくの名前はスピールティア・オー。
　スピールティア。
　オー。

　きみの乗るウォーハイドラの名前はトラップドアだ。
　トラップドアをつくったのはアルファ・ラルファ。

　トラップドア。
　アルファ・ラルファ。
　この二つが一番大事なことだ。

　どうか忘れないで。
　ぼくの名前を忘れないでいるのはぼくだけだって構わないんだ。
　スピールティア・オー。

　きみはトラップドアに乗るべきじゃない。
　触るべきでもない。
　見るべきでもない。
　それでももう逃げられない。

　今日のぼくはきみに書く。
　きみが誰かは知らない。
　もしかしたら明日のぼくかもしれない。
　そうじゃないかもしれない。
　ぜんぜん別の誰かかも。　
　ぼくはただきみが明日か明後日かそれとも。
　もっと遠いぼくであることだけを願ってる。
　きみがぼくであることを。

　トラップドア。
　乗らないで欲しい。
　あそこへ入ってはだめだ。
　ぼくだってもう知ってる。
　知っていても逃げられない。
　そんなことはわかってる。
　あいつはとっていく。
　扉の向こうにはあいつがいる。
　あいつはぼくをたべる。
　ぼくはどろどろになる。
　どこにもいなくなる。
　空洞のなかにいるのは幽霊だ。
　あいつのなかには幽霊がいる。

　スピールティア。

　スピールティア・オー。

　そう。
　何を残しているかの話をしよう。
　これは手紙だ。
　ぼくとぼくのきみそれから来ないで欲しいきみのための。
　ここから出て行って欲しいきみへの。

　どこかに書いておかなきゃいけない。
　忘れてはだめだ。
　だからぼくは書いている。
　この手紙を持っている。

　ぼくは昔のぼくからこの手紙を受け取った。
　そうして残し続けている。
　昔のぼくに会ったことはない。
　でもずいぶん長い間ぼくは手紙を知らなかった。
　きみは見つけられるだろうか。
　返事のないことはしっているんだ。

　それでもぼくだってきみに書いておきたい。
　お願いだ。
　あいつに乗ってはいけない。
　名前。
　トラップドア！
　ああ覚えておいて。
　あいつのなかには幽霊がいる。
　あいつはとっていく。
　あいつは少しずつぼくらを齧っていく。
　ぼくたちはだんだん減っていくんだ。

　忘れないで。
　あいつから逃げなきゃいけない。
　ぼくはもう逃げられないことだけ知ってる。
　
　きみに伝えたいことがたくさんあるんだ。
　今日はぼくひとりしかいない。
　ねえアルファ・ラルファは何を考えているのか。
　ぼくを一人にして何を狙っているんだろう。
　
　ぼくの名前はスピールティア・オー。
　忘れちゃいけない。
　どうか忘れないで。

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明日の作戦目標


遊撃機『クレイモア』
遊撃機『クレイモア』