シスターは言った。

「任務が滞っていましゅの」

シスターは言った。

「機体任務？些細な事、どうでもいいことですわ」

シスターは言った。

「わたくしが欲しいのは機械破壊の名誉じゃ無いんでしゅの」

シスターは言った。

「あの女と、あの男が地に伏して」

シスターは言った。

「呼吸を止める瞬間が欲しいんですの………」

シスターは笑っている。

「機械はわたくしの本業じゃございましぇんの」

シスターは笑っている。

「仕置きも、わたくしにはあまり向いてない」

シスターは嗤っている。

「きっと、そこはおねーしゃまたちが上手くシてくださる」

きひ。

「わたくしは凡人で良いんでしゅわ」

きひ。

「刀を握っても、せいぜいが３人斬り程度で良い」

きひっ。

「銃を握っても、せいぜいが２人撃ち程度で良い」

くひひ。

「毒を握っても、せいぜいが１人闇討程度で良い」

きひ、くひひ。

「確実に１人殺せるようにしておけばいいんでしゅの…」

シスターは眼を閉じる。

「……ただ、そろそろいい加減白星を上げておかないと」

「一緒に来ている黒いのが、喚きそうでしゅわ……」



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メカニックは、外に出る事を躊躇している。


この領域の市場を歩くこと。

施設をめぐって街を再認識すること。

サイレンの音を耳にすること。

知っている酒場に行くこと。

知っている誰かに会うこと。


誰かの口からポロリと漏らされる言葉が、怖い。

自分の口からポロリと零れていく言葉が、怖い。


彼女は、あまり笑わない。

困ったような笑みと、苦そうな笑みはよく浮かべる。

どこか緊張したような面持ちは、新米のそれではない。



碓氷の上に、立つ。

蓮の花がほとほと、ふっくらと開く、氷の螺旋。


「……待つのは、得意なんです……」