夢などすっかり見なくなった。
同時に、明日という感覚も既に薄くなり、今という連続性を感じることが強くなった。
身体器官を失った我々には、もうその在り方や自我さえも、在りし日からかけ離れているのではないかという恐れがある。

周辺的状況参加が論じていたのは、社会的そして物理的な環境が人に及ぼす影響と学習であったが、人はその身体器官という環境に最も影響を受けずにはいられないことが、体験をもって自覚できるようになるとは思っていなかった。

引き伸ばされた感覚は、やはり最適化され、どんどんと薄っぺらになっていく。

生者であるジメサゴが休息する間、私達は辺りを警戒しながらも、今に意識を馳せている。
明日とも知れぬ身、というと悲壮感を感じるが、先述した通りそんな感傷と無縁のままである。


実験結果の証明は遠い。
そんなことは我々全てが認識済みだ。
それでも、やらなければならない。
それは文字通りの存在意義にしがみついている訳ではない。
我が部隊に対する誇りと、博士に対する敬意を、背骨と二本の脚にして、ひたすらに歩き続けてみせよう。