南下する。マップを眺めるといくつかのビューポインタは反応しているようで安心した。とりあえず迷うことは無さそうだ。おおまかなポイントをディレイゾ側に渡し、行軍予定を建てる。
ディレイゾのパーソナリティは未だにつかめない。会話の途中、まるでこちらの返答を予測しているかのような速度で話題を進めることがある。かと思えば同じ質問を何回か投げかけてようやく回答が返ってくる時もあった。
もっともそれは私の言葉の選び方に問題があるのかもしれないし（可能性は多いにある）、はたまた通信のレイテンシが原因なのかもしれなかった。
とりあえず意思が通じているのなら大丈夫だろう、今の処。

周囲は圧倒的とでも言うべき荒野で、ときどきそこにどす黒い森や沼、谷などが交じる。正直気が滅入った。
野犬の群れなどを見かけることもあった。福鈴に補給を頼むことができた（金を積めば死体でも運ぶシンク・カーゴで輸送してもらうから、足がつく心配はないだろう）ので食料の心配から解放されたが、もしそれが叶わなければ今頃犬を煮込んで喰っていたのだろうかと考えた。
窮地に立たされた自分からあんな要請が飛び出すとは思わなかった。かなりリスキーな提案だったように思うが彼女はあっさりと受けてくれた。感謝している。

ディレイゾは私に負けず劣らず出不精なようで、一度もその姿を見たことはない。
休憩のコールを向こうからしてくることもあるが、それはちょうど私の偏頭痛が酷くなりだしたタイミングでやってくる。
総じて非常にーー何かの目的にむけて、緻密にーー訓練された人物だという印象を受ける。

野良ハイドラとまた遭遇する。
戦闘はシンプルだ。トリガーを引けば弾が出る。いいなと思う。
うまく動かない己れの躰とは天と地の差だ。