エウリプテリダ、ウミサソリ。不思議な名前を冠された機体だ。今回のミッションではほとんど接する機会は無かったけれど、不気味な存在感は、此処に戻ってきた今でも感じている。未確認機。そう呼ばれる出自不明な機体は、まるで幽霊のようにも思える。戦場でパイロットが命を落として、残された彼らは彷徨い続けている？もしかしたら、凄く古い時代のウォーハイドラなのかもしれない。ウミサソリ、私が産まれる遥か昔に絶滅してしまった生き物。
　此処で仕事をするようになって、10日が過ぎた。いつまで働くのだろう。その辺りは隊長が全て決めて仕切ってしまうから、私は知らない。未だに戦場で不思議な現象が起こったりもしない。私の世界が霧の向こう側に見えることも、友人が（漫画にはよくある展開だけれど）同じように迷い込んでくることも。

「み。みすと、ミスト・アヴェンジャー…だったっけ」

　盗まれた実験中の機体。不安定な事象と聞いて、その機体がもしかしたら鍵を握っているかもと考える。戦場に居れば出会うこともあるだろうか？でもその時は、きっと先輩が一緒に居る。出来れば先輩は巻き込みたくない。傭兵隊のみんなとも、隊長とも、…先輩とも。離れたくはないけど、でも帰れる術がそこにあったとして、私は、私は………
　残像領域と私の世界が行き来できれば良いのに。そんな夢物語を想う。もし、万が一、先輩が巻き込まれて私の世界に来てしまった時。先輩はそれを笑って許してくれるだろうか？
　私はさびしかった。つらかった、こわかった。
　
　……

　全部想像だ。まだ、何も決まった訳でも解った訳でもない。ミスト・アヴェンジャーに出会う事は、きっと、ない。