最近、寝ることが一つの楽しみとなりつつある。



ただの人形が夢を見るのが楽しみなど、滑稽に思えるかもしれない。

最近、毎晩のように不思議な夢を見るのだ。

それはまるで、記憶を綴るような――





『そういえばねカラム、私の役目についてなんだがね』



バディル様の声から、過去の記憶という名の夢は始まる。

これは――ある日の対談。そういえばバディル様が私を愛称で呼び始めたのはこの頃からか。



『私は厄災の天使、文字通り生き物の厄を取り扱うことができる。
　とはいっても、無闇矢鱈に振りまくのではない、どっちかというと回収業だ。』



バディル様の手には、紫色の禍々しいオーブがある。

それが、人の集めた厄なのだろうか。



『そうさ、これは回収した厄を溜めておくオーブ。

　幸福や不幸はどうしても人によって偏りが出てしまう。
　時には人並み外れた不幸を抱えてる人もいる。逆も然り。

　私の役目はそういう人から厄を回収したり、逆に幸福すぎる人に厄を注いで中和したり
　そうして下界の幸福のバランス調整をするのさ。』



そう語るバディル様の視線はオーブに集中している。

――心なしか、その目はうっとりしているようにみえる。



『……偶にこの厄が余る時があってね、有効な使い道がないか模索したんだ。
　そうして分かったこと……厄を、武器にすること。

　カラム、君に厄の力を少し授けよう。』



バディル様が私に触れる――背筋が凍るような、冷たく禍々しい力が私へ注がれるのがわかる。

しかし、それは我が身にうまく適応したようだ。



『これで君は更に強くなった。他の天使の戦闘人形よりも、一歩先へ踏み出した。
　カラム、強さは一種の正義だよ。いくら主神が綺麗事を言ってても、結局は力が重要視される。

　戦功をあげろ、力を身につけるんだ。』



この頃からだろうか。

バディル様が力に溺れ始めたのは――









今日の夢はここまで、か。

無機質な部屋の壁が視界に入り、現実を知らせる。



――強さは一種の正義。

私は――強くならなければならない。





バディル様が、そう命じたから――。