“残像領域の技術、そして戦術はもうすぐ新たなステージへと到達する”


　どちらの性別とも知れないその声が、やたらと耳の奥にこびりついて、仕方ない。
　ひなまつりとか、ニュースとか、通信を介して聞こえてくるものは今までも幾つかあったけれど、自分について少なからず言及された通信は、もちろん初めてだった。他の誰にも似た通信はあったらしい。不意に浮かんだのは先日のニュース――盗まれたウォーハイドラの話だったけれど、その答え合わせをしてくれる人は、当然居なかった。

　ミッションに出撃する時間はすぐそこまで迫っている。戦場に出れば、相手が言うところのデートの相手がやってくるのだろうか。何かしらの罠かもしれない。或いは、本当に新しい技術っていうのを見せてくれるだけかも知れない。どちらにしても、正規の方法でアプローチをしてこない辺り、信用しちゃいけない類の相手だろう。たぶん。けれどもミッションに出ないという選択肢はない。大丈夫、私には先輩がいる。万が一敵であっても、先輩と一緒ならきっとどうにかなる。信じているから。

　この仕事が終わるまであと2日。
　最初の出撃以上に、私は不思議と緊張していた。

　隣を見れば先輩がいる。だから、大丈夫。平気。怖いことなんて何もない。……