ENo.0205　エイブラハム・ブラックウッド

この戦場での戦闘が開始されて数週間が経過した。
しかし，今のところ敵対勢力に見るべきところはなく，無意味な殲滅戦が続くだけだ。
一つ一つの戦闘にどのような意味があるのかなど一切興味が無い。
これらの戦いに勝つことでどのような結果が齎されるかなど一切興味が無い。

アイランズの老い耄れが，回す仕事を金で選んだのだとしたら，
もはや，ここに居るべき理由など，どこにもないのかもしれない。


まもなくリソスフェア要塞への攻撃が開始される。
だが，要塞など時代遅れの骨董品だ。長距離ミサイルと戦略爆撃機で事足りる。

それを正面から攻略しろというのも妙な話だが……。
少なくとも，これまでの戦場よりは楽しめるだろう。

アイランズ退役少将が設立した民間軍事会社(PMC)。
旧軍部の腐敗を象徴するかのごとく，多くの軍需物資が横流しされ，運用されている。
特に旧式の兵装や，大規模派兵後の余剰装備，正式採用の見送られた試作品など，
行き場に困った装備の数々が流れ着く先として，重宝されているようだ。
結果として，旧世代の装備が中心ではあるが，PMCとしては十分すぎる装備を有している。

所属する社員は傭兵だけでなく，退役した軍人，逃亡中の罪人など多岐に渡る。
また，旧軍部で近しい位置にあった者を数多く引き抜いて戦力に加えている。
さらに，孤児や難民，人身売買された奴隷など行き場のない人物を兵士に仕立て上げ，
使い捨ての駒にするなどの蛮行が平然と行われている。