ENo.0323　第306特殊試験部隊

「奇襲だと？！」「南門だ！」
「警報を鳴らせ！中央塔！」
「くそ…砲塔が！霧が濃すぎる！」「サーチライトを向けろ！」
「月を背景に……？！」「なんだあれは！」

「ふん……ウォーハイドラの配備数がこの程度とはな。ヘリや装甲車両がいくらあってもモノの数ではない。」

エルコの都市、外壁を登りきり防衛兵器を破壊し……
霧を噴射しながら中央塔まで登り月を背景に見下ろす。
一部のウォーハイドラが城門により足止めをくらいながら破壊されている中
ようように出てきて見上げた連中が見える。
その、砲塔がこちらに向くのを悠々と感じながら。
大方の配置は掴めたが故に、降りる。

駆け下る必要はない。
短くブースターを蒸かしながら、中央塔の外壁を下りつつ
その壁に後腕をひっかけ掴み、軌道を緩慢につけながら
一番近いウォーハイドラへ降りる。

脚の爪が胴体にめり込み破砕音と悲鳴が聞こえる。
逆脚の軸を入れて飛べば、掴んだウォーハイドラはついでにと
いわんばかりにまた先のウォーハイドラへ放り投げられる。
そのまま叩かれたウォーハイドラが内壁にたたきつけられたが…
そのウォーハイドラ乗りが次に見たのは
その巨躯の後腕に吊り上げられた先ほどまで無事だった僚機だった。

「離せ！離せ！まて！撃たないでくれ！俺は生きて」
「中々に丈夫なものだ」

それを盾にした巨大ウォーハイドラが、一瞬緩んだ隙に剣を突き立てていた。


「内門を閉めろ！内側への侵入を許すな！ここを死守だ！」
「閉鎖用意！中に入れ！来るぞ！」

暴虐の限りを尽くすウォーハイドラの猛攻に
内周の防衛部隊は駆り立てられてしまった。
あと残るのは内部の防衛部隊と防衛兵器のみ…
外周はもうどうなっているのかもわからない。

「来たぞ！引け！次は爆破するぞ！」

その巨躯の瞳が捉えた時……あと少しで内側に繫がる唯一の門は閉じかけていた。
門の開閉機構を爆破してしまえば、あのウォーハイドラと
言えどこじ開けるのは難しい。

「爆破！」

既にブースターを蒸かす爆音が聞こえたからだろう。
それをかき消すように爆音が響く。爆破指示と閉門完了の同時だ。

だが扉は完全に閉まりきっていなかった。
何故なら防衛部隊の残骸がその閉鎖中の門に挟まっていたからだ。

ゆっくりと門に手がかかる。
その隙間から……真紅の瞳が揺れている。

「どうした。まだパイロットは生きているぞ……」

両の後ろ腕が城門をこじ開けようとしている。
エンジンと重ブースターを蒸かしているのか霧が濃く噴出していく……
その両腕に剣と、盾……まだ”味方の防衛部隊へ”向けて生存を訴え続けるウォーハイドラを携えながら。



・キルガール　防衛軍　会議室
「我々の指示なしでエルコを落としただと…？」
「たった一部隊でか」
「彼は暴走している！」「ユニオンの指示だったとか」
「越権行為だ。企業を調子付かせていないか」
「外様が……これ以上は我々の沽券に関わる」
「どうにかしましょう。要塞への派遣が近い」

我々アフラムインダシトリィは
城塞都市キルガールを拠点にする企業ユニオンです。
歴史は古く自由都市時代からの重工業産業の組合を基としており
現在は軍需重工業に切り替えてキルガールの防衛軍受注を中心に生産を行っています。
当領域等には現地での需要調査、およびウォーハイドラパーツの研究開発試験
並びに販売を目的として今回は参入させていただいております。
どうぞよろしく。

■今回のお知らせ。　[第１２週]
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
現在大変申し訳ありませんが近隣の都市国家へ本社移転の準備中です。
それに伴いユニオンでの研究活動は続けておりますが
販売事業につきましては一時中断とさせていただきます。
お客様には大変ご迷惑をおかけしますが近日中に営業を再開させていただきます。
尚、製品のサポートにつきましては継続して行っておりますので
何かありましたら下記までお手数ですがご連絡を……
また今週より旧エルコでの改修工事、また瓦礫撤去についての工事要員を募集しております。
残骸処理や撤去を引き受けていただける方々を我々は募集しております。
尚不法流民に対する警備任務も……