ENo.0532　エステル・クリスティーナ

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　　――“霧の輪の戦士”。

　それは、いつ生まれいでたのであろうか。密かに受け継がれた遠い彼方の伝承だよ。

　鈍く光る銀の飾りを身に着けているのが呪いの証。

　誰もが生きることを望み、そして街灯に寄り添う虫のように朽ちていく。

　故に彼らは戦いの中で強さに蝕まれていく。人としての拠り所を少しずつ失いながら。

　ああ、それゆえに。只人よ、彼らを恐れたまえ。

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　エステルは初戦を切り抜けた後安堵の気持ちに包まれていた。

　どうにかこの世界でも生きていくことができそうだ、という人心地だ。


　無論それが次、また次へと続く保証はない。

　今は後方で少しずつやれることをこなせばいい。目立つ必要はない。

　そうなれば今目の前で運ばれていく穴の開いた機体のように、つぶれたトマトの中身同然に変わってしまうのだから。

　ああ、そういえばおいしいケーキ屋があると通信で聞いた気がした。

　次の戦いが終わったら食べてみてこの居心地の悪さをうやむやにしたい。エステルはそう考えた。

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。