ENo.0323　第306特殊試験部隊

「ガレアード中佐、貴方に出頭命令が出ている。」
「ほう」

それで、それがどうしたと言わんばかりに瓦礫の上に男は立っていた。
その背後へ巨大な電磁ブレードを降ろしたウォーハイドラを従えながら。

ここはかつてエルコという都市があった場所。
その中央塔。現在は企業ユニオンであるアフラム・インダストリィの管轄区になっている。
現在アフラムの主導でその瓦礫の撤去や人的損害の撤去が行われており
ガレアード中佐率いる306試験部隊はその警備に当たっていた。
指揮下の部隊のウォーハイドラはトレーラーに格納し休憩を取らせながら。

そして底に現れたのがキルガール防衛軍の憲兵部隊。
しかし彼らは憲兵部隊とは言いがたい装備、ウォーハイドラを携えて中佐に出頭命令を
見せ付けていた。

「貴様は防衛軍の命令無しにこの都市を攻撃した。これは重大な越権行為である。
　加えて外郭団体とはいえ試験大隊はキルガール防衛軍隷下にも関わらず
　アフラム・インダストリィとの…」

「ずいぶん悠長なことだ。邪魔になった私を始末しに来たのだろう。
　アフラムへの見せしめの意味合いもあるだろうが。
　そんな体たらくだから企業に言いようにされる。」

貴様ッと出頭命令を出した士官が声を張り上げたその時
通信を知らせる音が響く。緊急の無線だ。
どうした、出ればいい。と中佐が笑うと士官は言われずともと
応えた。

「閣下、何事です。今ガレアード中佐に…」
「何をしている！今ヤツの部隊がキルガールに降下している！
　企業の連中と議会は手を結んでいた！今すぐ中佐を」
「全ウォーハイドラ降下完了。武装した者は全て抹殺せよ。
　繰り返す中佐からの命令は一つ。武装した者は全て抹殺せよ。」

そこで通信は途切れた。
爆音と共に。

「貴様らが来ることは事前にリークされていたのだよ。
　お陰で私を囮に部下らを全てキルガールに向かわせた。
　アフラムの補給物資定期便と偽装させてな。
　今頃貴様らの派閥の連中は焼かれているところだ。」

理解しがたいことだ。そこにあるトレーラーは、と見れば
いや見なくてもわかる。偽装だ。ここには中佐一人しかいない。
今から戻るか。いや戻るとしても…
この男を生かしてはおけない。士官は叫ぶ。
撃てと。
憲兵部隊の歩兵部隊が中佐に銃を向けて瞬間

中佐のウォーハイドラ…巨躯の毒竜が牙を剥く。
憲兵隊へ向けて腹部の対人機関砲が掃射されたのだ。
中佐は操縦棺に乗っていないというのに。

「バカな」
「全く306をただの置物、ガス抜き用の慰安部隊にしていた貴様らには呆れる。
　おおよそ検討が付くが私の着任後の研究報告になど目もくれていなかったのだろう。
　ネオ・コフィンシステムはただの操縦補助システムではない。
　ウォーハイドラの感覚を通して操縦者が一体化を図るなどというナンセンスな目的で生まれたのではない。
　ウォーハイドラの感覚を通しパイロットの判断を操縦棺へ覚えこませウォーハイドラに教育する構想の一部でしかないのだ。
　わかるか。
　元々”噂”程度だったウォーハイドラ……操縦棺にあるだろう自我を目覚めさせ
　スタンドアローン、人工知能などではなく生物として教育するプランの一部でしかなかった。
　そしてそれは既に完成している。
　今ここにな。」

ウォーハイドラの瞳が揺らめく。
その瞳は既に倒れている憲兵部隊ではなく、憲兵部隊が引き連れていたウォーハイドラ部隊に向けられており
それに彼らが気づいたときにはもう遅かった。
破壊されたウォーハイドラを掴み、叩き付けへし折る竜王の化身がそこで咆える。

しばらくして瓦礫と人的損害が追加された後にアフラムからの輸送部隊が到着する。
キルガールへ向かう便だ。
中佐はその輸送機に向かう。
自らのウォーハイドラを後ろに従えてゆっくり歩きながら……

我々アフラムインダシトリィは
城塞都市キルガールを拠点にする企業ユニオンです。
歴史は古く自由都市時代からの重工業産業の組合を基としており
現在は軍需重工業に切り替えてキルガールの防衛軍受注を中心に生産を行っています。
当領域等には現地での需要調査、およびウォーハイドラパーツの研究開発試験
並びに販売を目的として今回は参入させていただいております。
どうぞよろしく。

■今回のお知らせ。　[第１３週]
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
今回新たに重大なお知らせをさせていただきます。
今週より議会との協力により
キルガールは企業都市として独立することとなりました。
またこれに伴い防衛軍の再編が予定され新エルコと共に…