ENo.0261　Solitus

歯車が回る音がする。
カナエがつい最近組み上げたパーツに耳を押し当て、目を閉じていたソーナは伏せられていた目をゆっくりと開いて、そんなことを思った。
アグリオ・ブリッツと僚機を組んだ状態での戦場で無事に勝利を収めてからというもの、カナエは今まで以上にソリトゥスのパーツを作るときに頭を抱えるようになった。
同時に、カナエとソーナが残像領域に足を踏み入れたときに使っていた魔導機体――今はすっかり壊れて使えなくなってしまっているが――を分解する作業にも、力が入っているように感じる。
マーケットに出すものは別として、実際にソリトゥスに使うパーツにだけ、カナエは今まで使っていた魔導機体のパーツを混ぜるようになっている。

ソーナはカナエに比べて、圧倒的に知識がない。
故に、彼が一体何をしようと思って魔導機体のパーツをソリトゥスのパーツに組み込んでいるのか、ソーナにははっきり読み取ることができない。
――それでも。それでも、彼が自分たちの今後に関わるような、何か重要なことをしているのは、考えることができた。

カナエが組み上げたパーツを片手で撫でながら、ソーナは再び目を閉じる。
この残像領域に来てから、カナエしか見えていなかったソーナの世界は随分と広がった。
同じハイドラライダーたちの姿や交流、知り合ってから仲良くなり、交わした大切な約束。
ウォーハイドラたちの戦いを眺めながら手に入れたものが、今のソーナの世界にはたくさん詰まっている。
他人から見れば、どれも些細なものだけれど――ソーナにとっては、どれも大切な――大切な、宝物。

その宝物たちが放つ煌めきを、これからも見つめていくために――残像領域での戦いを、最後まで生き延びなくてはならない。
カナエに比べて、自分が出来ることは、とても少ないけれど――それでも。

しんとした倉庫の中であれこれ思考を巡らせて、最終的には再びそっと目を伏せる。
カナエが僚機との次の戦場の打ち合わせを終えて戻ってくるまで、ソーナはソリトゥスの傍で、一人で思考を巡らせ続けていた。

――何もできない自分にもできることは、一体なんだろう？