ENo.0023　アンナ・T・パラボ

先日の闘い。
私は仕事を全うした……
「私がいなければ」「私が他のポンコツライダーだったら」
もしかしたら全滅していたかもしれない。
そういった闘いに、電磁アンテナへのこだわり、
それを失わずに貢献できたことは私の喜びだ。
あの活躍を持って私の『アンテナ』は輝けたと言い切れる。
アレン・オブ・ダストシティ―――
アレには敵わなかったが…
（しかし彼がいなければ我々は全滅の憂き目にあっていただろう！）

そして私は自らの役割に思いを馳せる。
メルサリア――やつは明らかに、
我々の闘いのフィナーレとしての役割を担っている。
世界に産み落とされたものには役割があるのだ。
ノラだって死ぬべくして死んだ。
バルーナスも、ルオシュも、誰もかれもだ。
先はわからない。
深い霧の中に包まれている――
これは世界全てに言えることだ。
結局のところ世界がどうなるかだなんて我々の手には負えないことだ。
それを踏まえて私の生まれを考える――
こんなふざけたプロフィールとAIでこの世界にやってきた私だ。
決まっている。
『精一杯の』アセンブルを見せ、幕を下ろすこと、
それが私の最後の仕事だ。

この闘いが終わったとて、私が終わるわけではない。
残像領域にいる者達がどれだけ「続く」のかわからないが、
確かに歩みを進める者達はたくさんいるはずだ。
私とて終わりではない…
この恵まれた鋼鉄の体とライダーとしての腕前を活かせばどうだって生きていけるだろう。

『血まみれ王妃』
あながち大嘘でもない。
きっときちんとメンテナンスをすれば未確認機、とまではいかずとも
テンペストやら何やらには比肩できるのだろう、私は。

だが少なくともいまの私を見ている人に、
私の『先』は見えないだろう。
だから、私はこの最後の場で一番私らしいことをするのだ。



――もっとも訳の分からなく、人が嫌がるハイドラ。
それが私の集大成。
それには最高の舞台と最高の仲間達が、ここにあった。

…というのが今『一回目』の記録だ。
何が『一回目』だって？
…私は再起動、ないし繰り返し、だってわかっている。
わかっている…
だからこそわけのわからないハイドラに乗ることができる。
さて、増援がくるまで耐えられるか…というところか。
じゃあ…行こうか

ーーーーーー

『二回目』だ。
前回はたしかに圧勝したかもしれないが、
増援が駆けつけるまではリグドゥルガーの姿さえ見られなかった。

そして私はこの機体に満足していない…当然だが。
アレの驚異的な破壊力に晒されて耐えられるハイドラはほとんどいないだろう。
私の戦場の頼れるハイドラライダーは…まあ、二人というところか。
それを加味して私がもっとも仕事できる機体を組んだ。
今や次元の彼方に到達できるUSB…
装備したレーダーに頬ずりする。
始めにここにきた時に作ったパーツ、
私はまだ覚えている。
索敵できる電磁アンテナだ。
アンテナへの拘り、それがよく現れていると思う。
そして今…この理想のハイドラにもしっかりレーダーを積むことができた。
チアーズの面々にも思いを馳せる。
適正という能力…不可思議な現象、霊障を扱うための力。
私はそれを鍛えるためのユニオンにずっと入っていた。
極々初期しか不可思議な現象は使っておらず…
ただ駄弁るためだけのユニオン、と見ていたのだが。
この最終決戦に備えたハイドラ。
これは霊障をメインの攻撃手段に添えたものだ。
最後の最後にチアーズにいた意味が出るとは…
運命とでも言うべきか。
感謝の一つも送っておくか。

…さて、今度こそ悔いのない戦いができそうだ。
最後の最後に今までやったことのない動き…
これはこれで私らしいだろう。
では、行こう

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。