ENo.0426　旧文明遺失技術研究所

これが私達の、いや私だけが遺されたこの土地に置ける最後の、まだ最後ではない。むしろ始まりに当たる一律化された世界における第一歩。

黒鉄の四肢を駆り荒野を駆け抜ける冷たい巨人より吐き出される赤熱のなんと心躍ることか。

神は世界を見捨てたのではない。見棄てられたのは寧ろ神のほうだ。

我々は神を信じない。己が信仰を捧げるに値するは科学に溢れながらも、その神秘が色褪せず、むしろ溢れんばかりの深淵を孕むこの土地そのものだろう。

この学び舎最後の一にして嘗て在った常世より棄却された我が意志はこの地で新たな始まりを告げるか、其れ共この高天原にて鉄と油で構成された神の遣いにより供物として召されるか。

どちらにせよ神が神の為に創り、そして身勝手にも造物主を棄てし呪われた私の結末は幸福に至る道に続いてはおらず脳内を媒介する羽虫が如く陰惨で無機質なそれに過ぎない。脳髄に寄生するこの虫が見せる妄想によって身に飼うハリガネムシによって日向に追いやられた蝸牛のように自らを死地へと誘うその蒙昧さの原因が信仰と言う名の脳髄に巣食う寄生虫が原因ならば取り出さねばならない。頭蓋骨を開き大脳を切開し小脳をミキサーにかけて朝食に振る舞わなければならない。小脳を媒介する虫を広めなければならない。宿主をより上位のものへ移し替えようとするハリガネムシのように脳が訴えかける。私如きの器に収まるような信仰ではないと虫が囁く。

供物を捧げよ。