「…………この『世界』の霧は普通と違って落ち着かねぇな」

「何がどう違うと思う？」

「……変なもんが混じってる気配がする。いや、それがここじゃあ普通なのかもしれねぇが」

「お前の勘は鋭いな。まあ大体間違っては居ない。少なくとも我々の世界の霧よりもこの世界の霧の方が不可解なエネルギーを帯びているのは確かだ」

「エネルギーねぇ……」

「ソレを取り込むための機関も、発生したエネルギーを元に機体を動かす駆動系の造りも独特なものだ。やはりこの『世界』の技術力は高い」

「技術力があるのはいいが、元の世界に戻る為の技術とかもついでなら用意しといて欲しいもんだな……」

「さて、どうなるかね。しかしこの『世界』にその技術の一端がある可能性はゼロではない。あの『星海ゲート』を思い出せるか？」

「金属と鉱石で全体が組み上げられてたアレだろ？　あんなシロモノ良く作ったもんだと感心したぜ。アレが何だってんだ？」

「あのゲート自体が我々の時代からすれば未知の技術の集合体だったのは確かだが、ソレ以上に異質なモノを感じたんだよ。私はね。……もしかしたら古代文明期にこの『残像領域』と交流のあった文明が存在していたのかもしれない」

「それがあの遺跡の主だってか？」

「通常の遺跡ならば電源系の仕掛けが殆どだが、あの遺跡は違った。魔力と……後、他にも未知の力の影響を受けていた感じを受けたのさ」

「何だその未知の力って」

「君も見ただろうに。それにこの場にだって嫌というほど満ちている」

「……『霧』か」

「発掘隊が最初に訪れた時、あの遺跡は休止状態だった。しかし何らかのミスが起きてゲートが起動、『残像領域』と限定的に繋がってしまい霧が漂いだした。それがあの場にあふれていたものであり、あの時暴れまわっていた無人兵器を動かしていた原動力だったんじゃないか……という推測さ。確認したくとも依頼主と連絡を付けられないから何とも言えないがね」

「霧で動く兵器、ねぇ……」

「少なくとも現時点でそれは嫌というほどに証明されているだろう？　乗り手ならば余計に実感があるだろうに」

「魔力やらデンキやらを動力源に、って言われたほうが余程俺ぁ納得できるってなもんだぜ」

「その魔力や電気による駆動兵器の存在を認められたのは遺跡に潜ってからだろうに。それ以前に私がその話をした時のお前の顔を今のお前に見せてやりたいものだよ」

「ンだよ……どんな顔してたってんだよ」

「『生き物でもないただの金属の塊がそんなわけのわからないものを餌代わりに動くなんて何をコイツは言い出しているんだ気でも狂ってるのか？』……みたいな顔だった」

「……ぁー……思い出してきた何かソレ……かなり前の……」

「馬鹿言ってる暇があるなら彼奴の弱点を教えろ生き物ならばあるだろう、と話を聞かずに喚くものだから思わず投げ飛ばしたのも良い思い出だね。何であの時お前は死ななかったんだろうかね、ガル。死ねば良かったのに」

「相変わらずお前俺に対して何だってンなどぎついんだよ！？　何か整備手伝いに来てた他の奴等にゃ愛想良く『不慣れなモノでまだこちらの技術力を完全に理解しきっていない未熟者ですがよろしくお願いしますね』なんて猫かぶりしてたくせによぉ！？」

「私の真似をするな気持ち悪い。殺すよ？」

「ちょっと気に触ることしただけで殺すって言う癖そろそろ改めようぜ！？」