霧170、電磁波4　外出予定を取り消す

・脚部を変えたことによる重量軽減計画は成功
・スレイベルは電磁ブレード持ち　早急に電子攻撃対策をすべし
・演習反省点　フォボスに頼りすぎ
・でも対人戦観戦はとても楽しかった！
　→昔は他人の機体や戦法なんて興味なかったのに

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　霧濃度12%。とても見晴らしがいいこの日、配属4日目を迎えた傭兵達は遊撃機ではなく傭兵同士、あるいは僚機として認められている無人機と演習を行うことになっていた。もちろん私もその1人だった。演習を終え傷ついたウグイスをガレージに預け、へとへとになった体でシャワー室へ向かい汗を流す。着替えを済ませカフェテリアに向かい、昨日買ったプレッツェルを食べながらマッチング表の面白そうな組み合わせに印を付ける。そうやってペンを動かしているといきなりドン、という鈍い音と、体を揺さぶるような振動が伝わってきた。視線を音のした方向に動かせば窓、そのまた先から見えるのはウォーハイドラ同士の衝突。別の演習の真っ最中だったようだ。
　席を窓際に移して観戦する。窓に近付いてわかったことは、車輪の付いたウォーハイドラが横たわっていたことと、その僚機らしき二脚から何やってるんだという女の罵声が飛んでいたこと。どうやら二脚の機体の操縦者はかなり動揺しているらしく、そいつが振りかぶった一撃が相手のタンクの装甲に弾かれたとき、また女の慌てた声が演習フィールドのポールに取り付けられたスピーカーを通じて響いた。それを待っていたかのようにもう1体の二脚――タンクの僚機――が確実なジャブを入れる。そうして、罵声女は撃ち墜とされた。
「通さないってのはいいことだよなぁ」
　あまり格好良い活躍とは言えないであろう黒焦げの二脚がガレージに戻っていくのを見送りながら、私は自分の演習を振り返っていた。購入したばかりの電磁ブレードを振ってみたはいいものの、その斬撃は電子防御をとても厚くした相手に伝わるはずもなかったし、対策をしていないように見えた僚機にもかすり傷程度の損害しか与えられなかった。結局はよくわからない霊障とかいうものとフォボスの銃撃頼りだった。フォボスがテスラだったら今頃私は蜂の巣になっていたかもしれない。

　それから3試合程度見終わったところでカフェテリアを後にした。自分にはとても真似のできない芸当の機体もいたし、逆転劇のような展開を見せた戦いもあった。ただ観戦しているだけなのに楽しすぎて、部屋に戻るまでずっと笑い顔でいたと思う。大きな収穫だった。
「やあベティ、今日も元気かい？」
　スティーブンを呼び出せばいつものように馴れ馴れしく話しかけてくる。
「良い事があったので元気」
「言い方そのものは元気そうじゃないね。さて、僕を呼び出したからには何かラモラックに伝えたいことがあるんだろう？」
　タブレットに映るアセンブリシミュレータをパーツカタログに切り替えてから話し始める。
「ウグイスの新しい腕を作ってほしいんだ。術導肢じゃない方の、白兵戦向きの腕」
「ヘデラがあるじゃないか」
「あれ、基本中の基本ぐらいの性能しかないから物足りなくなってきた。それに今回は耐電仕様で造ってもらいたいんだよね」
「腕で……耐電……電磁鉄線相手にそこまで対策するのか？」
　一言多い音声AIだな。
「違う！　鉄線じゃなくてスレイベルだよスレイベル！　あの自称次世代機、生意気にも電磁ブレード振り回してたんだよ。それで結構痛手を負っちゃってさぁ……開発チームに言われるのはいいけど、あんたにそういうこと言われると無性に腹が立つ」
「失礼。発言を訂正する。腕で……耐電……あまり例を見ない仕様だな。だが任せてくれ！　ベティと契約したからには必ず期待に沿う一品を造り上げてみせるさ！」
「すごい自信ですこと」
　半分呆れながら適当に返事をする。タブレットの画面をアセンブリシミュレータに戻して目を通しながら、あれを外してもいいかな、レーダーも新調したいな、誘発装置も気になるな、なんてことをぼんやりと考えていた。
「それじゃ、素材をラモラックに送るよう手続きしとくね。カタログ見終わってからになるから15分くらいかかりそうだけど」
「15分は意外と短いものさ！　では開発チームに伝えておくよ。通信終了」

　アイテム15番「マイルフィックの羽搏き」[35/耐電/貯水]と19番「自動修復装置40」[40/AP回復/---]を消費して
　腕部A[火炎]をベースに重量拡張を20で作製！
　パーツ名は「ブラックドッグ」に決定！