私達とジメサゴの行軍は（紆余曲折はもちろん）極めて順調であった。
もう半日も移動すれば、彼女に教えてもらった座標に届くだろう。
「定期報告」
「こちら〈測猟〉。異常無し。」
「ところで、どーすんのよ〈頭領〉。このままノコノコあの娘に追随すんの？ハイドラ工場なんか行った暁には博士がどーなるかわかってるでしょ？」
「女の嫉妬は怖ぇな。〈頭領〉も大変ンだ。」


いつどうなるのかわからない私達が、このまま人里に出ることができないのは皆の言うとおりだが
ジメサゴの機体に移ってしまった武装が戻ってくるまでは、離れるわけにもいかない。
かといってあまり良いアイデアがない。
これこそ〈傲造〉や〈応闘〉に相談したい話であるが。。。



打開策など思いつかぬまま、2時間ほど経過した時だった

「臨時報告。嫌な予感がする。」
〈測猟〉の言わんとしていることは私達ですらわかる。
霧の濃度が飛躍的に濃くなり、光量と気温が目に見えて下がる。
私達のオリハソツカが戦慄いている。

咄嗟にジメサゴに警戒通信を入れようとして
機体ごとジメサゴの方に振り向いた瞬間
ジメサゴの機体の背後の霧が口を開いた光景が見えた。

あれが<渡り坑>か。
そう思うや否や、その口は圧倒的引力を持って、何もかもを喰らい始めた
ジメサゴの機体も例外ではなく、それは宙に浮き、今にも飲み込まれんとした。
私達は駆け出した。

飛ばしたアンカーの操作と機体操作を二人に任せると
私達は意識をオリハソツカに落として、その力を最大限まで引き出した。

アンカーを引っ掛けたものの、それしきでは止まらない。
だからこそ、この霧の濃さは丁度よかった。
「オリハソツカ！！！」
オリハソツカは霧に干渉し、霧の性質を変える効果がある。
その効果を持って、ジメサゴの機体を包む霧を硬化させ、宙に浮いてしまった機体を固定した。
だが急拵えの霧は＜渡り坑＞の引力に抗う時間を稼いだだけであり、すでにいくつかヒビが入っていた。

「「「＜頭領＞」」」
総意は決まっていた。オリハソツカを更に強める。

「ジメサゴ、合図をしたらアクセルを開けろ。」
ジメサゴの機体を固定している霧が限界を迎えるそのギリギリまで、霧でジメサゴの道を拓く。
機体の車輪に接地するように霧を敷き、ここから逃げ切る道を。
実験外でこんなにもエンジンを稼働させることもいとわないで。

〈測猟〉が「限界だ！！」と判断した瞬間、私達も叫んで、この手をジメザゴに伸ばした。


「来るんだ！！」