ザ――ザザザーッ
　　　明日の出汁濃度…74％……
　　　　　　明日の粉粒濃度…130％……

　＊＊＊＊


「（なあおい、そこの旦那とはどういう関係だ）」
《　・・・　・・・　・・・　》
「……」
　客に聞こえない程度の舌打ちを男はこぼした。
　うどんが食えない体になっただとか――ことの起こりはAIのくだらない思想が発端だというのが男にはすぐ想像が出来た。と言えどもAIはこの客とのやりとりに介入せず沈黙を保ったままだ。
　素知らぬ顔で対応をしているものの、明らかな敵愾心を感じ取った男は咄嗟に身構えかけすらいた。
（……、“身構えた”のか？　そりゃ、ロボットとロボットが相対している時なんかは当然身構えちまうだろう。生死がかかってる。ただ俺はあいにく人間だ。機械同士の戦いで何の一つも出来やしようか。多少の通信を調整するぐらいなら何とか覚えたが。目の前のこいつもそうだ――この屋台に以前殴られたとあらば無事じゃすまねえ。こうして対面している以上、怨みなんざ掃いて捨てるほどあるだろうよ。いや、それはいいんだ。こいつとあいつの話であって俺の話じゃない）
　ただ、と男は内心付け加える。静かに脳の冷える感覚、幻覚かという血錆の匂い。戦いには覚えがある。麺を打つということ以外にこの腕は、確かに何かをしていた。