ENo.0141　鼠花火

「…赤だな、赤」
「赤？」

出撃の合間の昼下がり、とある場所にある格納庫。ネコは気合十分と言った様子で次の機体を早々に組み上げ、塗装作業に精を出していた。俺は一応邪魔にならないようにと隅の方に陣取り、ネコが持っていた端末を勝手に操作して戦果報告を眺めていたところだ。
端末の画面には前回の戦闘の収支が表示されている。収入が1300に届かないくらい、整備費だのユニオン費だのが400ほど引かれ、残りが900弱。そこまでは良い。

パーツ代だの材料費だのがごっそりと引かれている。ざっと、1600ほど。
見間違いじゃないか？俺はそう思って何度か確認したが、確かにそう書いてある。このハイドラというやつの整備には、思っていたよりはるかに金がかかるらしかった。前回あいつが作っていたエンジンは、俺でもわかるくらい上等なパーツを組み込んでいた。そりゃあ、金もなくなる。
あいつは収支報告なんて細かいものは見たがらない。そして、どうにもハイドラを前にすると、金銭感覚というものが頭から抜け落ちてしまうらしい。だが俺の知ったことではない。

棚から赤いペンキを取り出してきたネコを尻目に、静かに画面をニュース放送に切り替える。
儲かろうが破産しようが、どうせ全部あいつの金だしな。