ENo.0371　Ash Furter

発電機殺し。

俺を見捨てた人間への復讐に燃えていた俺は、いつしかそう呼ばれるようになった。

発電機を狙ったのは、人殺しを避けた、とか自己満足的な倫理観によるものではない。
ただ単にいちばん効率的だったからだ。

発電機は逃げないし、反撃もしてこない。近づくことも簡単だから、適当な鈍器で壊せる。貴重な銃弾を使う必要もない。人間一人を殺すより楽だった。

……何より、あの町では人間ひとりの命などより発電機の方がはるかに貴重だった。
人間はいくらでもあちこちを逃げ惑っているが、発電機は危険を冒して工場あたりを一日中漁り、ようやく見つかるかどうかだ。
電気も水道も止まった町で、発電機は命綱だった。奴らを怒らせるにはその方がいい。

そして実際、『発電機殺し』は『人殺し』よりも、果てはあの町に溢れかえった『生ける屍』たちよりも嫌われ、憎まれる存在となった。皮肉なことに。

今にして思えば、Gennyなどと愛称まで付けられ、珍重される発電機への嫉妬だったのかもしれない。

知ったことか。最早どちらでもいい話だ。