ENo.0113　ブラック・タグ

　機体の制御など必要なことはすべて人工知能の彼女、キバナ・アマがやってくれるらしい。
　記憶の無い私にとってはありがたいことではあるが、逆に何もする事が無いのだ。
　食事も鼻に通された管から投与され、排せつも体に接続されたカテーテルで済まされる。
　言ってしまえば私は操縦棺に縛り付けられ状態になり、外へ出ることも叶わない。
　せめて食事ぐらいは人間らしくありたいと願ってしまう。

ﾆｱ『まるで食べた気がしないな』
　『これなら固形レーションの方がマシだ』

「まるで食べた気がしないな」

　あぁ、まただ……。
　要らない思考が重なったかのような気分だ。
　頭の中が霞むような感覚。
　私はこれが苦手だ。
　キバナ・アマがいうには何も問題無いというが、人工知能にはこの感覚が認識出来ないのであろう。

　あまりにも暇を持て余しているので何か無いかとせがんだ所、一つの情報コンパネを操作する権利を手に入れた。
　内容はデータの破損が激しいがそれでも今の私にとっては十分な暇潰しの材料であった。
　まずは先頭のファイルから閲覧していくことにしよう。