ENo.0378　フレイド・コークス

　今日もまた新たな戦場へと向かいハイドラを駆る。
依頼を終えて帰還すれば、次の依頼が舞い込む。
そんな日々の繰り返しである。

記憶を失った当初の頃は、あまりの同業者の数に、いずれはパイの奪い合いとなり
次第に我々の様な戦争屋の仕事は無くなるのではないかとも心配したものだが。
どうやら我々のパイは次から次へと運ばれてくるらしい。

「ようやく事態に気付いた企業連盟はハイドラ大隊を招集し、現在に至ります。そして……」

ニュースではまた新たなパイになりそうな報道が流されていた。

　遺跡要塞の再起動

過去の技術を用いた遺跡要塞が再起動したところで何の脅威になるのだろうか。
ニュースを耳にして、私の頭にまず過ったのはその感想である。
過去は過去、現在の技術には遠く及ばぬだろうに。

しかし、この残像領域ではその考えは全く正しくない。
様々な異界と通じ、様々な何かが流れ込む世界だ。
失われた過去の技術が、現在の技術を遥かに超越していたとしても不思議ではない。

……。
そんな残像領域の特異性を知りながら、私が最初に思い浮かべた感想は何処から来たのだろうか。
それは、以前の私が持っていた常識なのか？
だとすれば、私は残像領域と呼ばれるこの世界の外部から来た流れ者なのかもしれない。

「企業連盟…か。」

ふと、私が愛機を借りている「レンド社」を思い浮かべた。
あの企業もまた、企業連盟とやらに加わっているのだろうか？

レンド社は軍事関連の市場への進出は慎重…という評判ではあるが、私はそれを人道的な正義感に拠るものだとは思っていない。
過去の技術とやらが、現代の世界において有益であるならば、他の企業にその技術を独占されるのは避けたいだろう。

サイボーグ医学・ロボット工学の分野で名を売る中堅企業。
高い技術力を有した製品は評判高いが、軍事兵器市場への参入には消極的。
「ありふれた製品を、高品質で。」をモットーに掲げている。