ENo.0008　エリカ＝ヒースハイデ

（いや俺確かに言われた事はやるっつったけどさ？完全にナメてっしょコレうーわ萎える～～～～～～～～～～↓↓↓）

エリカの気分はとてもじゃないがいいとは言えなかった
男から届いた指令　それはコロッセオで戦えという内容　どうやら賭けの対象にされるらしい
無論エリカに拒否する意思はない　どのみちやる事は変わらないのだ
しかしその内容が非常に気に入らなかった
エリカは男へ連絡を取り文句をつける
ウォーハイドラは戦争の道具でありそんなつまらない事に使うものではない　それが彼の思想だった
男は答えた　ウォーハイドラは金を動かすものであると　目的は多岐に渡る　その目的の一つに娯楽も含まれるのだ
ハイドラライダー達はこのような仕事であっても多くの場合金を対価に受けるものだという
最後にこれはあくまで自分個人の考えだとも付け足した

エリカに金銭的な欲は無い　機体の整備代だけがあれば充分とも考えていた　特に目的もなければ必要な物もない
操縦棺の中の液体に浸かっていれば食事すらも必要なかった
男はエリカが何か面倒な境遇にあるのではと考えた
金銭の価値を説き娯楽の必要性を伝えるが彼は興味を示さない
話は平行線だ　男もエリカもこれ以上議論を続ける事の無意味さを感じ取った
残像領域には他にも多くのハイドラライダーが存在する　男は機会があれば彼らとも話してみるように勧めた
エリカは無気力に返答すると通信を切った



「少々変わった流れ者。果たしてそれだけだろうか」

残像領域には他の世界から色んなものが流れ着く
それは人であったり　機械であったり　日用品や食べ物などであったり　よくわからないいきものであったり
いつどんなものが霧の彼方から現れ消えていってもおかしくない
あの青年もそうやって迷い込んだ旅人なのかもしれない
だとしてもどこか歪なものがあると男は感じていた
彼は無知ではない　知識があるにも関わらずそれに価値を感じていないようだった
睡眠はとるようだが食事に対しても不要と切り捨てる様子は人間的とは言えない
人間のような形をしているがその中身は全く異なった異質な何かなのかもしれない

何よりエリカは操縦棺内の液体に浸かっていれば食事は不要と言っていたがそんな機能はヒースハイデにはない
液体はパイロットの意識とヒースハイデのHCSを密にリンクさせるものだがそこから栄養が供給される訳ではないのだ
それなりに負担のかかる方式であるためずっと浸かっていれば肉体や精神に不調を起こす
聞くところによるとエリカはほぼ一日中操縦棺の中で過ごしているが別段異常はないらしい
追い追い調査が必要になるかもしれない　男はタスクの増加を感じ溜め息をついた


ちなみにこの間当のエリカは液体の中に浮かびながら何をするでもなくただただぼーっとしていた
もしヒースハイデの操縦棺が透明な素材で出来ていたらさぞ幻想的で退廃的な光景に映った事だろう
水中に浮かぶ真っ白な肌と髪の美青年　覆い隠すのは中身に不釣り合いな無骨で重苦しい黒曜石の棺
彼はそこに閉じ込められ続けるのを望んでいた