ENo.0406　ファイブカード

　
・仕事の報酬がしめて1532c
・機体の整備費が414c
・射撃訓練の弾薬費が100c
・耐粒子攻撃仕様の電磁砲が360c
・耐電子攻撃仕様の履帯が360c
・追加の砲塔が534c

……差し引きで236cの赤字。

こんなのは帳簿や会計の心得が無くたって分かる。何度計算しようが変わりやしねえ。



やれることはやったはずだ。
戦場のド真ん中に位置取ってテンペストだとかいうおっかねえ兵器の注意を惹き、得体の知れねえ“旧式”の行く手に立ち塞がり。
ついでにお返しの一つ二つもくれてやった。

こいつの堅牢な造りと俺の施した射撃用の改造とを活かすにゃこうするよりなかったし、こうするのが一番だろう。
だからその分、整備費も嵩んだんだが。

それにしたってあんな命を張った真似をして、それでも足が出るとは思わなかった。
……思わなかったじゃねえ。とんだ甘ちゃんだ。駆け出しかよ。



───真っ当な稼ぎじゃあ、これが限界なのか？

そんな思いが過ぎった矢先、垂れ流していたニュースから≪月の谷≫の一報が飛び込んできた。
遺跡要塞、遺産技術、辺境軍閥、企業連盟───

こいつはいい。実にいい香りが端々から漂ってくる。
なんとかして奴らの小競り合いに紛れる術は無ェか？

遺棄された要塞なんざ絶対にとんでもねえ代物が眠ってるだろうがよ。
お堅いならず者共に任せきりにしとくにゃあんまりにも勿体無い、勿体無さすぎる。
上手く運びゃあ、せこい稼ぎでせこい赤字に頭を悩ます暮らしともおさらばってもんだ。



と、前途に一筋希望が見えてきたはいいものの。
今日は今日で、既に“仕事”を入れちまってる。

また別のグループの賊が出たんだと。
ご苦労なこった。
そういうのは堂々とやるもんじゃァないってのによ。

かつての乗り手たちの遺したもの。

今は霧深い荒野に広がる射撃訓練場としてここに在る。
晴れ間のある時分には、乾いた発砲音が繰り返し響く様も聴き取れる。