ENo.0301　花火や　紅扇

「う」

と、自分の呻き声で目が覚めた。
枕元の時計を叩く。
ごぜん。さん。じ。に。じゅう。さん。ふん。
ハァー、息をついて、布団を胸元まで上げ直した。


戦場の残像が身体にまだぴったりと重なりあっている。
まるでたった今ハイドラから降りたかのようで……リアルな夢……

夢？

さっきの光景が夢でしかないと、それが過ぎた今、誰が証明できる？
こんなにも鮮明なのに。

アセンブルのミスがあった。
度重なる機関砲の射撃、機体装甲に穴が空き、捲れ上がり、
ついに上がった火は霧に湿気って、鈍くて臭い煙が上がるばかりだった。



　　　（糞）
　　　（糞だ）
　　　（こんなもののはずがない。私が今までどうにかやってきたのは）
　　　（こんな誰にも知られないところで）
　　　（こんなつまらない）
　　　（こんな何もない）
　　　（音にも光にも見放されて）
　　　（誰にも見られず知られず）



静かに迫る熱のように、死が棺を取り囲んだとき、
私の絶望がとっていた姿をくっきりと見覚えている。
瞼の裏にそれが焼き付いているようで、
結局目玉をぎょろつかせたまま、小便みたいな日光が窓から漏れ込むのを待っていた。

外れに格安で借りたガレージ
中心部から離れたがらんどうの野原にぽつねんと建っている。
利便性は極悪。