ENo.0406　ファイブカード

　
音声メールが届いていた。

送信元を確認し、開き、聞き、自分の顔が渋面になったのが鏡でも見ているように分かった。



元仲介人の『相談したいこと』？
なんで俺なんぞに持ちかけて来やがったんだ。

戦場から無事遠ざかったってんなら、今さらただの野良ライダーに頼むことなんて無ェだろうが。
仕事上の付き合いだけにして欲しいもんだ。

仲介する奴と仕事を請ける奴、パーツを売る奴と買う奴、たまたま一緒に仕事をすることになった奴───
俺にはそのくらいの関わりで十分だ。

もしも今度、でけェ責を負わせられるような“お願い”でもされたら即刻断って受信拒否リストにぶち込んでやる。
精々ワンちゃんとの付き合い方ご相談、くらいの話であってくれ。



……メールの電子ファイルを電子上で放り投げ、とりあえず人の居ねえ静かなとこにでも行こうとしていたが。
音声の後半に気を取られて頭から抜けそうになっていた前半の話がふと思い出された。

≪霧笛の塔≫の、根の深さ？　企業連盟よりももっとおっかねえもんだと？
そこらのゴロツキみてェなライダーどもに節操無く仕事を配り歩いてるだけの奴らじゃあねェのか。
俺もその配られる側の一人じゃああるんだが。

なんとも霧の向こうを見透かそうとするような話だ。俺にゃなんとも判断がつかねえ。
そういう大仰な話題にはなるべく関わりたくねえもんだが。

人付き合いも、組織を股にかけた権謀術数も、そういうのが好きな奴らだけでやってくれ。

かつての乗り手たちの遺したもの。

今は霧深い荒野に広がる射撃訓練場としてここに在る。
晴れ間のある時分には、乾いた発砲音が繰り返し響く様も聴き取れる。