ENo.0176　クロムノート・ウェルサキオン

「…ん？　もう夜明けか」

地平線の彼方からうっすらと陽が差すのを見て、クロムは機体を操作する手をいったん止めて撤収準備を開始した。
別に禁止されているわけではないから別に明るくなってからも死体漁りはできるだろうし、実際、うっすらと明るくなる戦場にはまだ作業を続けている連中もちらほらと見受けられた。クロムはそんな連中をちらりと一瞥すると、鼻で笑い、成果を持って拠点へと帰還した。


…帰還して1時間後、クロムは別の機体に乗り換えて、戦場へと向かっていた。
クロムが普段使っている"レイジングヴァイパー"を一回り小さくし、まるで卵に手足が生えたような形をしており、右手には小型の粒子ブレードが握られており、左腕には小型の機体としてやや大きめの連射砲が取り付けられていた。
これはマウスと呼ばれている、耐久実験や動作テストのために造られたハイドラだった。簡単に手には入るが、クロムが普段使っているものにくらべると端子も少なく、圧倒的に性能は劣る。
それを手慣れた様子で操りながら、クロムは戦場近くの丘に辿り着くと停止し、レーダーを起動した。陽はまだ登り切ってはおらず、辺りは霧に包まれ見通しが悪いのは変わらないが、レーダーは霧の中にまだ作業中と思われる、その場から動かない機体がいる事を示している。
クロムはにやりと笑ってレバーを引く。"ラット"はほとんど音もなく、あちこちで鳴り響く作業音にまぎれる様にして、そっと一機のハイドラへと接近する。
相手は接近に気づいていないらしく、若い男はクロムの方を見ようともせず、大型ハイドラのものらしきエンジンパーツを調べているところだった。男のものと思われるハイドラは頭部を開けた状態で佇んでいる。

「素人か」

なるほど、とクロムは1つ頷き、レーダーを確認する。
反応があったのは目前の機体だけであり、こちらに近づいてくる機体の反応はない。
クロムはエンジンを作業する男をまっすぐに見ながら、"ラット"の身を屈ませ、それから、一気にレバーを引く！
弾けるような速度で"マウス"が濃霧を突き抜けて、真っ直ぐに男の機体へと接近する！
若い男は驚愕の表情でクロムを見て、大きく手を振って自分がここにいるとアピールをしている。
馬鹿が、とクロムは笑いながら男を躊躇いなく踏み潰した。ぶしゃり、という水音がクロムの耳に届く。

誰かの叫び声が聞こえた。まだ誰かいたのか、とクロムはハイドラの方を見る。
先程の位置からでは見えなかったが、ハイドラの頭部には若い女がいて、何かを叫んでいる。
"ラット"が流れるような動作で左腕の連射砲を頭部へと向けたところで女は仇の存在を思い出したらしく、クロムの機体を睨みながら頭部を閉じるが、ガンガンガン、と貫通性に優れた40mmの弾丸は頭部をたやすく貫通し、頭部内のライダーを守るはずだった強化ガラスを粉砕しながら女の片腕を吹き飛ばす。
女は今度は痛みに叫びながら手元のレバーを引く。女の駆るハイドラはそれに反応して、垂れ下がっていた腕を上げ、作業用粒子ブレードを正面に向かって構える。
女は残った片手で顔にかかった血と涙を拭いながら、顔を上げ、割れた頭部の隙間から外を見て、呟いた。

「アイツが、いない…？」

どこへ、という疑問が浮かぶより早く、隙間から突き込まれた高圧粒子の刃が頭部内を蹂躙した。

「…アタマと操縦棺はダメそうだなあ、こりゃ」

内部をかき回しながら、クロムは気だるそうに独り言ちた。

戦争！　戦争！　戦争だ！
喜べよ下種畜生ども。地獄のラッパが響いてきたぞ。
俺達が呼ばれている。
多くの血を流すため、多くの命を踏み潰すため、多くの死を広げるために。地獄の戦鬼が。

よう戦友！　アンタが求めるのは血か？　金か？　闘争か？　栄誉か？　はたまた正義なんて求めてるのか？
まあ、いいさ。どれだって。御大層な理由だろうがクソみたいな理由だろうが、やる事も同じなら逝く場所も同じなんだからよ。

どうあれ、ここにいるって事は俺と同じく戦争をより盛り上げたいってイカレ共だ。
死体と涙と恨みと鉄屑を空高く積み上げたいって、死んだら地獄行き間違いなしの畜生共だ。

同じ死体を漁る野良犬同士、せいぜい仲良く分け合っていこうぜ、なあ？

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格闘反応な命が葉っぱ勢のあなたに。
ユニオン活動は格闘×3　反応×2 → 格闘×2　反応×3の順で更新毎に変更していきます。

10人の状態で死亡者が出た場合、また2更新以上行動しない場合は参加許可を外す可能性があります。ご了承ください。

ユニオン購入は何かしら意見あるまでは機動力＋3%を予定しています。