ENo.0381　ハンナ・コヴァルスカ

リソスフェア要塞の跡を見て、ハンナはふうっとため息を付いた。
そして、

「さらばだ。バイオスフェアで待つ……」

ルオドと名乗る敵から届いた、メッセージを聞く。
得体の知れない力を携える辺境軍閥に、いずれ更なる戦いに挑むことになる。
この事実に、彼女の胸中ではまた先への恐れの気持ちが膨らんだ。

リソスフェアでの戦いも、激しいものであった。
周囲では少なくとも7機のWHが破壊され、3機のファイアードラムも皆損害が酷かった。
これだけでも、よく生き延びたものだというのに、とハンナは苦笑する。


ハンナはまた、デバステイター・ユニットのことを思う。
戦況は芳しくなく、テンペストの砲撃に怯えていた折に、それは充填した。
強い光を照射しながら攻撃するそれに、敵機は被害を受け、彼女の周囲から離れていく。
領域殲滅兵器、と物騒な名前を付けられたそれは、結果として彼女を助け、彼女もまたそれに暖かみを感じていた。


休まる暇もなく、ハンナには次の指令が届く。
都市の地下での探索と、戦闘。
その支援に出ろ、という旨である。

「嫌だなあ……」
そういうハンナではあったが、少しだけ、「立ち向かおう」という意思も芽生えていた。

外からは隔絶されている、不確定な領域。
鉄筋コンクリートで作られた大きめのトーチカで、塗装された白い壁には『ナマズくん』と呼ばれる謎の生物が描いてある。
椅子と机も数個置いてあり、上には筆記用具が置かれる。
トーチカの端にはスプレー缶も並ぶ。

貴方はここが“残像領域”に存在しているものとして認識してもいいし、認識しなくてもいい。