ENo.0070　ユリア・クールハート

『ＴＵＲＮ０９：すたぶフレンズ』


「　　　」
『　　　』

「『うえええええええええええええええええええ！！！？？』」

　霧の立ち込める朝に、二人分の絶叫がこだまする。

「なっ、なっ、なっ……！」

　エルシスが成長したらこんな姿になるだろうという青年は、モニタの中で、いつかの記憶のままの、感情の無い顔をして、佇んでいた。

『何で君が！？　何で僕が感知出来なかったの！？』

　セロ。
　元の世界で、零番目の試作品（プロトタイプ）の名を与えられていた、エルシスの同類、『接続者（スタブ）』。
　だが、彼は死んだはずだ。世界の再生と引き換えに。
　否、確実に死に際を看取った者は誰もいないのだから、シュレディンガーのナントカなのかもしれないが。
　それでも、彼がエルシスと同じ存在としてこの残像領域に存在し、それを今の今まで、電脳空間に漂っていたエルシスが全く感知出来なかったのも、まったくもって不可解な話である。

『……隔離区画に眠っていた』
「……あ」

　彼がぽつりと呟いた言葉に、ふと思い当たる。エルシスも気づいていなかったブラックボックス。そこに彼の意識が揺蕩っていたという事か。
　だがしかし。そこに彼がいたという事は。

「もしかして……私の記録を読んだか？」
『「私は弱い。彼に頼らなければ、生きられない程に」』
「やめえええええええ復唱するなあああああああ！！！」
『え。記録って何ユリア。何見つけたの。何書いたの』
「何でもない！　何でもない！」
『「彼と出会ってからずっとそうだ。彼が相方として私を支えてくれた。彼がいなければ」』
「やめろと言うにいいいいいいていうか何でそこで当たり前のように電子ザリガニまで持ち出す！！」
『……悪い事書いたみたいじゃないから、まあいいや』
「良くない……良くないけど……、お前が気にしないならもうそれでいい……」
『で、気を取り直して』
『君も僕と同じように、「トリグラフ」のシステムに干渉出来るの？』
『ああ』
『「トリグラフ」は元々、一人のライダーと、二人のAIシステムのサポートの、文字通り三位一体をもって、完全なるウォーハイドラとして機能するように造られていた』
「……？」

　ふと、疑問が舞い降りる。
『トリグラフ』の名をつけたのは自分自身だ。後付けの名前に対応するシステムが、自分がこの残像領域に来た時に既に存在していたというのか。
　しかも、一人の操縦者（ドライバ）と二人の操縦者（スタブ）が揃うのを、当然として待っていたかのように。
　まあ、考えたところで、やはり答えは出ないのだろうが。

「とにかく、これからはお前も共に戦ってくれるという事か？」
『尽力はする』
『とりあえず、ざっとシステムチェックはして、「トリグラフ」にこれだけのリソースの無駄を発見した。削れば、わずかながらも機体能力値は高まるだろう』
「へえ、気づかなかったな」
『……』
『それから、この機体に有効なアセンブル案を幾つか組んでみた。重量過多を解消する為に、中二脚から重二脚に移行する手段も提案する』
「すごいな、これだけの選択肢があれば、戦場での戦い方にも幅が出るだろう」
『……』

　目を輝かせて、新たな接続者（スタブ）の話に聞き入る彼女は気づかない。
　同じ種類のペットを飼った時、最初からいる方を立てねば、居場所を失くしたと思い込んだ彼、ないし彼女は、ひどく機嫌を損ねてしまう事を。

　同じだからと、すぐに仲良し（フレンズ）にはなれないのだ。

To be continued...

Reinclaft-Millia Service

数年前にできた、残像領域の片隅の整備屋。
相場よりほんの少し高い値段で、ウォーハイドラのみならずライダーも整備する。
早い話が、機体のメンテをしに来るついでに、店主が常々作りすぎる飯のおこぼれにありつける整備屋である。
飯だけの利用も歓迎だが、この店にはメニューはない。店主が作りすぎたその日の飯が出されるだけである。

！店および店主（ENo.4）の既知可
！ユニオンに参加せずメッセで利用する体も歓迎
！ロールするキャラを推奨するかも

細かいこと：http://midnight.raindrop.jp/milliapede/union.html