ENo.0141　鼠花火

リソスフェア要塞を超え、奥地へ。

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ネズミは一足早く次回の戦場へと足を運んだ。下見なんて殊勝なものではない。ただの暇つぶしだ。

鋼鉄のコロッセオ。
この辺りではこういう闘技場は珍しくないようで、これまでに通った街でも同じようなものを見かけた。
だだっ広い会場では、準備のためだろうか、数体のハイドラが行き交っている。ぽつりと建つ電波塔が時折異音を発し、ネズミが持つ端末の画面にノイズが走った。

賭けの対象にされるのは、意外と悪い気分じゃない。
自分の行動ひとつで、金が動く。それで、どこの誰とも知らない奴らが喜んだり、悔しがったりするんだ。なかなかに愉快だ。

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。