ENo.0356　ハルティ・カーデルマン

　宗教ロッジ制圧作戦は継続していた。
　ハイドラ大隊はローテーションで臨時中隊を編制しつつ、拠点を虱潰しに制圧を繰り返しているのだ。
　カルト化した新興宗教団体は、信者から兵器を布施させているのか、盗ませているのか毎回ながら戦力はそれなりである。
　拠点の要衝にはトーチカも敷設され、防衛戦力が強化されているように見えた。
　もっともこれに関しては、トーチカが増設されたのではなく、軍事拠点跡に宗教ロッジを建設したのかもしれない。
　その拠点を機動破壊兵器と機動DRの混成部隊が防衛している以上、通常のDRを主軸とした戦力では返り討ちもありえる。
　ハイドラ大隊に仕事が回って来るのは当然の帰結だった。
　《大隊》なら、この程度のロッジは中隊規模でほぼ損害なしに制圧できるからだ。
　この程度の任務に廻されているのは僥倖だろう。
　最近では、非合法都市制圧作戦に投入されたハイドラ中隊が壊滅したという情報もある。
　ハイドラ全機撃墜の上、ライダーに戦死者３名が出たという噂だ。
　確か、あの任務にはフリント君も参加していたはずだ。大丈夫だろうか？
　手術室や死体安置所では見かけた記憶はないが、ミンチになっているなら顔では分からない。
　リソスフェア要塞攻略戦で辺境軍閥は三割の戦力を損耗したという。
　通常の軍隊であれば三割の損耗は全滅に等しいが、群雄割拠する辺境軍閥の話である。
　そのエリアの戦力を叩いたという話に過ぎないのだろう。
　データ収集なのか未確認機や術導DRの目撃情報も増えている。
　次の要塞攻略まで小競り合いが続くのだろう。
　ミッションを選べるのであれば、格上の敵との交戦は避けた方が良さそうである。
　今の我々には単機で未確認機を圧倒できるような高性能機は与えられていないのだから。

某ハイドラ基地、ハイドラ乗りの集うサロンの端には炬燵が置かれていた。
――そこは猫達の領域である。
今日も猫達を求めて、餌を携えた危険な奴らが集まって来る。